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総長のことば

平成28年度大学院入学式祝辞

 

皆さん、名古屋大学大学院への進学、おめでとうございます。本日ここに、2,206名の皆さんを名古屋大学大学院に迎えることができました。名古屋大学を代表して、心から祝福し、歓迎いたします。

皆さんは、今、これから始まる大学院生活に、熱い思いと期待を胸に抱いていることと思います。名古屋大学大学院で、これから新しい一歩を踏み出そうとしている皆さんに、総長として、また大学院の先輩として私から応援のメッセージを贈りたいと思います。

 

第一に、これからの大学院生活では、新しい自分を創造していってほしいと思います。そのために、積極的に物事に立ち向かう勇気と、自分自身を鍛える厳しさを持ってほしいのです。皆さんが、自分の選んだ研究テーマを、悔いを残さず徹底的に追求すること、平たく言えば面白いと思ったことや疑問を大事にして徹底的に研究すること、これは皆さんの自分らしさ、すなわちアイデンティティーをつくる基礎になります。

本学特別教授である赤㟢 勇特別教授と天野 浩教授は、ガリウムナイトライド(GaN)による青色LED の発明という快挙を成し遂げ、ノーベル物理学賞を受賞されました。そこには、周りの状況に左右されずひたすら自らの研究テーマを追求し続けた、ぶれない生き方が明確に示されています。赤㟢特別教授の、「われ一人、荒野を行く」という言葉には、その思いが込められています。そしてそのようなプロセスを経験することで、皆さん一人ひとりが自分という人間の形を作る、すなわち皆さんの自分らしさを作ることになるのだと思います。

私が座右の銘としている言葉があります。「安定は動の中にあり」という言葉です。この言葉は、私の高校時代の国語の先生から教わったものです。この言葉を聞いたときに、私の心の中に強く響くものがありました。これまでの人生の様々な経験の中で、「積極的に動けば、何かが変わる」、「慎重になって結局動かなかったときは、後で強く後悔する」ということを、自分自身の感覚として持つようになりました。最近では特に、この言葉を、一層強く意識するようになりました。

失敗を恐れず、まずはやってみる。成功しても失敗しても、そこからまた新しい世界が見える。そしてそこでは、新しい人、新しい考え方に出会えるのです。その結果、より高いレベルの安定が得られることになるのです。勿論、これには多くの苦労が伴います。しかしその苦労は、きっと後になって大きく報われることになるでしょう。

世界を大きく変えた発明家のトーマス・エジソンは、「Our greatest weakness lies in giving up. The most certain way to succeed is always to try just one more time.(我々の一番の弱みは、あきらめること。成功するためには、とにかくもう一度チャレンジしてみることだ)」と、言っています。数多くの失敗を糧に、あきらめずにチャレンジし続けたものが、成功にたどり着くのです。

私は偶然の発見や成功はない、と思っています。いつも目標を持って自らを鍛えていないと、偶然の出来事も見逃され、大事なものが手からこぼれてしまうのです。その意味で、常に意識し、努力して、偶然のチャンスをつかみ損ねないようにすることが大事だと思います。天野教授が、何千回の失敗を乗り越えた結果、大きな発明にたどり着いたことは、「必然が生んだ偶然」といえるでしょう。今まさに皆さんは、最も知的で、エキサイティングで、かつタフな世界に飛び込もうとしているのです。心躍らせて、研究生活をエンジョイしていただきたいと思います。

 

次に、皆さんに伝えたいことは、「自分の狭い専門領域に閉じこもらずに、視野を大きく持って、新しい研究にチャレンジしてもらいたい」ということです。

世界は今、多様な価値観や異なる文化が交錯し、目覚ましい勢いでグローバル化が進んでいます。それに伴い、これまでの常識では想像できなかった、様々な矛盾や問題が噴出しています。また、我が国では、世界でも類をみない超高齢社会がすでに到来しており、国の将来に対する不安が広がっています。国の内外で、解決すべき課題は山積しています。皆さんには、どのような専門領域に進もうと、ぜひ高い志を持って、このような人類的な課題に、果敢にチャレンジしてほしいと思います。

人類が直面している複雑で困難な課題を解決するためには、これまでの縦割りの思考方法ではなく、異分野の連携ないし融合による新しい考え方や研究方法が不可欠です。現代においては、このような手法やシステムによって、新しい成果が続々と報告されています。それらの研究成果は、私たちの社会を大きく変えるもの、あるいは変える可能性があるものになっています。様々な領域の多彩な研究者と連携する事は、新しい価値の創造という観点からは、極めて重要なことです。皆さんにはぜひ、大きな視点を持ち、ダイナミックに研究を進めていただきたいと思います。

さて、今お話ししたことは、広い意味で「多様性の許容と共働による創造」ということにつながります。名古屋大学には大学院も含めて、学生だけで約16,000名、教職員も含めると約2万名以上の人々が活動しています。多彩なバックグラウンドと能力を持つ人々が集まり、また、わが国だけでなく海外の多くの大学、研究機関、企業とも活発に交流しています。このような環境の中で、多種多様な研究者が連携して行う、分野を超えた学際的な研究は急速に増えており、大きな成果を挙げつつあります。これらの活動は、新しい価値を創造する知的な成果を生み、ひいては実社会を大きく変えていく原動力にもなると思います。

これからの社会において、多様性がますます重要性であることは言うまでもありませんが、名古屋大学は多様な専門領域間の連携に加えて、男女共同参画の推進や外国人留学生の受け入れを増加させるなど、多様性に富むキャンパスを創ってきました。ジェンダー、国籍、人種、文化、歴史、考え方の違いなど、多くの壁を乗り越えて、お互いに理解しながら問題解決のために協力することは、極めて生産的であり重要です。これらの具体的な取り組みが、名古屋大学では先進的かつ実験的に行われています。

皆さんにはぜひ、名古屋大学で多様性= diversity を肌で感じていただくと同時に、このメリットを存分に生かしてもらいたいと思います。

そのような取り組みの一つとして、リーディング大学院があります。これは大学院生が、自分の専門領域で正規の課程を行いながら、同時に、国際性やコミュニケーション能力を磨くための様々なイベントへの参加、多様な人たちとの交流、社会的に活躍しているリーダーとの対話などを通して課題解決に挑むことによって、国際的に活躍できるリーダーを育てるプログラムです。正規課程をこなしながらのプログラムであるので、エントリーした学生には負荷がかかるわけですが、参加した学生はより一層、大きく成長しているようです。「自分を鍛える」という意味では、極めてチャレンジングなプログラムであり、ぜひ皆さんも積極的に挑戦してください。

 

名古屋大学はその歴史の中で、学界、産業界をはじめ多彩な分野で数多くの人材を輩出し、人類の幸福の実現、そして我が国と世界の発展に大きな貢献をしてきました。21世紀に入ってからノーベル賞を受賞された6名の研究者をはじめとして、学界では先駆的な業績を挙げた多くの研究者を輩出しています。また産業界では、本日ご臨席をいただいておりますトヨタ自動車株式会社名誉会長で、名古屋大学全学同窓会会長でもいらっしゃいます豊田章一郎様はじめ、日本の経済や社会を牽引するリーダー人材を綺羅星のごとく輩出してきました。

その根底には、名古屋大学の持つ自由闊達な学風があり、名古屋大学で育った人材は勇気ある知識人として、人類の幸福と社会の発展のために貢献するという伝統があると思います。

名古屋大学はこれまで、地元各界の皆様の熱烈な想いと教職員のたゆまぬ努力により、地域の大学から日本の中核大学へと発展してきました。そして今、世界有数の大学を目指して羽ばたこうとしています。どうか皆さんも、このような伝統に後押しされながら、皆さん自身の新しいチャレンジをしてください。

アイルランドの劇作家でノーベル文学賞受賞者でもあるバーナード・ショーはこう言っています。「Life isn't about finding yourself. Life is about creating yourself.(人生とは自分を見つけることではない。人生とは自分を創ることである)」。

皆さんが名古屋大学大学院で過ごすこれからの時間は、まさに自分を鍛えて大きくする絶好のチャンスです。皆さんには、ぜひ勇気と希望を持って前に進んでほしいと思います。

名古屋大学での大学院生活が皆さんにとって、実り多く充実したものとなるよう、強い願いを込めて、私からの祝辞といたします。本日は本当におめでとう。