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総長のことば

平成28年度学部入学式祝辞

 

新入生の皆さん、名古屋大学への入学、おめでとうございます。本日ここに、2,197名の学部学生を新しい仲間として名古屋大学に迎えることができました。名古屋大学を代表して、心から祝福し、歓迎いたします。皆さんは、大学受験という厳しい試練を乗り越えて、名古屋大学に入学しました。合格発表後のリラックスした気分も徐々に消え、今は、これから始まる名古屋大学での学生生活に思いを馳せ、夢と期待に胸を膨らませていることと思います。

皆さんが、名古屋大学で新しい生活を始めるにあたり、総長として、また大学の先輩として、私から応援のメッセージを皆さんに贈りたいと思います。

 

名古屋大学の歴史を紐解くと、その源流は1871年(明治4年)に創設された仮医学校・仮病院にさかのぼります。この年を名古屋大学の創基としています。また、1939年に我が国で最後の帝国大学として総合大学の歴史が始まり、これを名古屋大学の開学の年としています。その後、紆余曲折を経て今日に至っていますが、この間多くの先輩たちが、名古屋大学を地方の大学から国の拠点大学へ、そして日本の大学から世界の大学へと飛躍させるべく、日夜努力を重ねてきました。

名古屋大学は特に21世紀に入ってから、大きく花開きました。学術研究では、21世紀に入ってからノーベル賞を受賞した日本人13名のうち6名の方が名古屋大学に関係する研究者であり、これは世界的に見ても特筆すべき事実です。また、このような素晴らしい先達に続く、前途有望な若手及び中堅の研究者の育成にも力を入れており、彼らは、素晴らしい研究成果を挙げつつあります。

一方で、名古屋大学の特徴である 「自由闊達な学風」 の下で教育を受けた卒業生は、「勇気ある知識人」として、産業界を中心に素晴らしい活躍をしています。その中には、本日ご来賓としてお招きしておりますトヨタ自動車株式会社名誉会長で名古屋大学全学同窓会会長の豊田章一郎様はじめ、リーダー中のリーダーとして、日本の経済と社会を牽引している方が綺羅星のごとくおられます。これは、名古屋大学がこれまで教育と研究を通じて、日本と世界の発展に貢献してきた証左の一端であろうかと思います。

名古屋大学の理念は、2000年に制定された名古屋大学の憲法ともいえる学術憲章で定めており、その使命を「基幹総合大学として、人間と社会と自然に関する研究と教育を通じて、人々の幸福に貢献すること」 としています。また、世界、アジア、そして地域において、人類社会に貢献することを明確に謳っています。この理念は今日でも燦然と輝いています。皆さんにはぜひ、入学を機に学術憲章を読んでいただきたいと思います。このような名古屋大学で、これから新しい生活を始める新入生の皆さんに、ぜひ二つのことを考えていただきたいと思います。

 

第一に、これからの名古屋大学での学生生活を通して、積極的に皆さん自身を創造していってほしい、創り上げていってほしいということです。

アイルランドの劇作家でノーベル文学賞受賞者でもあるバーナード・ショーはこう言っています。「Life isn't about finding yourself. Life is about creating yourself.(人生とは自分を見つけることではない。人生とは自分を創ることである)」。

自分はどこからきて、どこへ行くのだろうかという自分探しの旅ではなく、未来に向かってどのような人間になるか、人や社会のためにどのような貢献をするかを、積極的に考える学生生活であってほしいと思います。徹底的に未来志向であってほしいと願っています。皆さんが将来どの様な道に進むにしろ、最終的にはそれぞれの専門性を活かして、様々な分野でリーダーシップを発揮しながら、人類や社会に貢献する事が最終的なゴールであると考えています。その基礎を作るために、まず、総合大学で学ぶということの醍醐味を、皆さん自身の中でしっかりと体感してほしいのです。

名古屋大学では、高い専門性はもちろんのこと、幅広い視野と教養を備え、社会貢献の高い志を持ち、グローバルにリーダーシップを発揮できる人材を育成したいと考えています。そのために、全学部の教員が参加して、全学教育科目を実施しています。学部を問わず、知識人として必要な共通の課題を取り上げて教育を実施し、総合大学ならではのダイナミックな教育が展開されているのです。皆さんには、ぜひ、自ら積極的に、そしてまた思う存分、広大で深遠な学問の香りを胸いっぱい吸い込んでいただきたいと思います。

その上で、最終的な目標である人類や社会に貢献するということの意味を考え、その喜びと困難さを体験し、これからの人生で自分がチャレンジすべき課題を探求し、専門分野の選択と実践を行い、国内・海外を含めて多くの体験をするなど、試行錯誤しながら一歩一歩、成長してください。

 

今一つのアドバイスは、多様性を理解し、許容し、そして共働によって新しい価値を創造していく基礎を、この名古屋大学で培ってほしいということです。

今後、人類の幸福と持続可能な社会を実現するために、多様性がますます重要性であることは言うまでもありませんが、名古屋大学は、多様な専門領域間の連携に加えて、男女共同参画の推進や、外国人留学生の受け入れを増加させるなど、多様性に富むキャンパスを創ってきました。

ジェンダー、国籍、人種、文化、歴史、考え方の違いなど、多くの壁を乗り越えて、お互いに理解しながら問題解決のために協力することは、極めて生産的であり重要です。これらの具体的なチャレンジが、名古屋大学では先進的かつ実験的に行われています。名古屋大学は多様性=diversity に溢れています。皆さんはこれまでにない多くの経験をすることでしょう。そのような中で自分の未来を考え、学問を修め、自分を鍛えて大きくなっていってください。

多様化の一環として名古屋大学では、国際化を強力に進めています。国際化は、世界有数の大学を目指す名古屋大学にとって、極めて重要な柱であるだけでなく、皆さんを高める有効な手段でもあります。名古屋大学のキャンパスは年々、国際色が強くなっています。欧米の大学はもとより、名古屋大学は早い時期からアジア諸国との交流にも力を注いできました。留学生の受け入れも積極的に行っており、現在、名古屋大学の全学生約16,000名のうち留学生の割合は約14%、約2,000名に達しています。

一方で、名古屋大学から海外に正規留学する学生も年々増加し、昨年度は短期・長期併せて700名を超える学生が海外で学ぶ機会を得ています。直接、海外に触れるということは皆さんにとって、大変大きなインパクトがあります。今後、すべての名大生が、在学中に留学を経験できるよう、名古屋大学では支援体制や留学システムを充実していきたいと思っています。また、皆さんも、様々なチャンスを利用して、積極的に前に進んでほしいと思っています。

 

さて、私が座右の銘としている言葉があります。「安定は動の中にあり」という言葉です。この言葉は、私の高校時代の国語の先生から教わったものです。この言葉を聞いたときに、私の心の中に強く響くものがありました。これまでの人生の様々な経験の中で、「積極的に動けば、何かが変わる」、「慎重になって動かなかったときは、後で大いに後悔する」ということを、自分自身の感覚として持つようになりました。最近では特に、この言葉を強く意識するようになりました。失敗を恐れず、まずはやってみる。成功しても失敗しても、そこからはまた新しい世界が見える。そしてそこでは、新しい人、新しい考え方に出会えるのです。その結果、より高いレベルの安定が得られることになるのです。勿論、これには多くの苦労が伴います。しかしその苦労は、きっと後になって大きく報われることになるでしょう。

 

世界は今、多様な価値観や異なる文化が交錯し、目覚ましい勢いでグローバル化が進んでいます。それに伴い、これまでの常識では想像できなかった、様々な矛盾や問題が噴出しています。また、我が国では、世界でも類をみない超高齢社会がすでに到来しており、国の将来に対する不安が広がっています。国の内外で、解決すべき課題は山積しています。

皆さんには将来、困難な課題に果敢に挑む人材に成長してもらいたいと、切に願っています。この名古屋大学で、勉学に励み専門性を高めるとともに、高い志と幅広い視野、多様性を理解し受け入れる広い心、そして目標を実現するためのコミュニケーション能力とリーダーシップを身につけてください。

名古屋大学での学生生活が皆さんにとって、実り多く充実したものになるよう、強い願いを込めて、私からの祝辞といたします。本日は本当におめでとうございます。