名古屋大学基金

募金のお願い

大学の概要/学部・研究科

総長のことば

平成30年度学部卒業式祝辞

名古屋大学を卒業される皆さん、本日は、ご卒業まことにおめでとうございます。本日ここに、学部学生2,206名、大学院の博士前期及び博士後期課程1,824名、あわせて4,030名の皆さんが、名古屋大学を卒業します。皆さんはこの名古屋大学で、教員、友人、先輩など、多くの人に支えられながら、互いに切磋琢磨して、本日を迎えられました。心から祝福したいと思います。長い間、皆さんを温かく支えてくださったご両親やご家族の皆様にもお祝いを申し上げます。そして、本日は、名古屋大学全学同窓会の会長で、トヨタ自動車株式会社名誉会長でもいらっしゃいます豊田章一郎さまにご臨席を賜っております。ありがとうございます。
 

キャンパスで勉学や課外活動に必死で取り組んでいたころは、気づかなかったかもしれませんが、卒業生の皆さんは、多くの困難を乗り越えるたびに成長し、入学した時と比べてはるかにたくましく、また、人間的にも大きくなったと思います。今、どんな気持ちで、今日この卒業式に臨んでいるのでしょうか。
 

さて、私が総長に就任したのは、2015年4月でした。本日、学部を卒業される皆さんの多くは、私が総長になった年に名古屋大学に入学されました。以来、立場は違っても、同じキャンパスで活動する仲間になりました。私も当時、総長として入学式で祝辞を述べるというのは初体験でしたが、月日の経つのは早いもので、早4年の時が過ぎてしまいました。4年前の入学式で、私は皆さんに、3つのことをお話ししました。第一に「大学で学ぶということの意味を自分の中でしっかりと確認してほしい」ということ、第二に「多様性に富む名古屋大学のキャンパスで、できるだけ多様な人たちとコミュニケーションをとってほしい」ということ、そして、第三に「何事にも勇気をもって立ち向かい、小さくてもいいのでとにかく一歩を踏み出してほしい」ということでした。

 

名古屋大学のキャンパスでは、様々な学問領域で、様々な教員や学生が、日々、教育、研究、社会連携、国際交流などの活動を活発に行っています。高校時代とは全く違った広大な地平がそこに広がっていたのではないかと思います。また、これらの活動は個別に、そして、ときには融合しながら新しい価値を生み出し、明日の豊かな社会を作っていく大きな力になっています。皆さんは、入学してから、この広大で深遠な学問の営みを体で感じ、難しいことに果敢に挑戦し、多くを学んできたはずです。これからは、名古屋大学の同窓生として、広い視野と高い専門性で、誇りをもって新たな道を切り拓いていただきたいと思います。

 

私は、名古屋大学のキャンパスは、多様な人々とコミュニケーションをとることができる大変貴重な場であると思っています。互いを理解しあうことは、人間同士の垣根を低くし、互いを尊敬しあう第一歩だと思います。そのような中から、連携や協力が生まれ、素晴らしいヒューマンネットワークができ、多様でありながらも円滑で自然な環境、すなわち、インクルーシブな環境を作ることができると思います。ヒューマンネットワークは、皆さんひとりひとりの人間力を格段に高めます。皆さんは、名古屋大学でどのようなヒューマンネットワークを築けたでしょうか。このネットワークは卒業後の長い人生で、皆さんを豊かにしてくれる大きな財産になります。いつまでも大切に、そして、さらに充実させてください。

 

次に、「一歩踏み出す勇気」についてです。2014年に天野浩先生らとともにノーベル物理学賞を受賞された赤﨑勇特別教授の「われ一人、荒野(あれの)を行く」という言葉は、今でも私の心の中に強く残っています。この言葉は、強い信念で物事を貫く覚悟の大切さを教えてくれます。20世紀中には不可能だといわれた青色LEDの発見は、人類社会を大きく変えた発明ですが、そこには高い目標を掲げ、信念を貫いて研究を続けられた赤﨑先生と天野先生らの不屈の精神が読み取れます。また、この教訓は次のようにも言えるでしょう。すなわち、「努力なしの偶然の発見はない」ということです。いつも目標を持って努力していないと、偶然の幸運も見逃され、せっかくのチャンスも逃げてしまうと思います。私の座右の銘である「練習千日、勝負一瞬」、という言葉にも通じます。
 

さて、皆さんの母校である我が名古屋大学は、これまでも数多くの改革を行い、発展を続けてきました。そのような努力が認められて、昨年(2018年)3月には、文部科学大臣から、「指定国立大学法人」として指定を受けました。これまで名古屋大学を含めて6つの大学が指定を受けています。指定国立大学法人は、日本のトップ大学というブランドであるとともに、「世界屈指の競争力ある大学を目指すポテンシャルがある」と国が認めたものでもあります。ポテンシャルを活かすためには、大学全体として、不断の努力とそれをやり遂げる強い意志が必要です。また、産業界、国や自治体、地域社会との緊密な連携も必要です。私たちは、現状に満足せず、大学をより発展させて世界屈指の研究大学にし、最終的には日本と人類社会の持続的発展と幸福な社会の創造に貢献すべく、まさに今、大きなチャレンジを始めています。教育、研究、国際化、社会連携、管理運営、財務経営の各方面での思い切った改革、そして、岐阜大学との法人統合による東海国立大学機構設置に向けた取り組みなどは、果敢なチャレンジの一例です。そして、このような改革を、是非とも成功させたいと考えています。それにより、名古屋大学の教職員や同窓生、地域社会の方々に、一歩前に出る勇気を与えたいと思っています。皆さんには卒業後も、母校の動向を見守っていただくとともに、同窓生として名古屋大学と密に接触を保ち続けていただけたら幸いです。
 

最後に、名古屋大学の周年事業についてお話ししたいと思います。皆さんが卒業する今年は、奇しくも、1939年に名古屋帝国大学が設置されてから80年目にあたります。今、キャンパスの一部には、創立80周年を祝うフラッグやポスターが飾ってあります。そして、再来年(2021年)は、1871年(明治4年)に名古屋大学の源流である仮医学校・仮病院ができてから150年目にあたります。その真ん中の年である2020年、すなわち、来年は、東京オリンピックの開催される年でもありますが、現在、構想中の岐阜大学との法人統合により、「東海国立大学機構名古屋大学」としてスタートする予定の年でもあります。名古屋大学は、創立80周年あるいは創基150周年にあたって、将来の発展を見越し、新しい大学としてスタートします。もちろん、新しい法人においても、伝統ある名古屋大学の名前は残りますし、指定国立大学法人という名称も、名古屋大学が保持することに変わりはありません。東海国立大学機構では、将来、名古屋大学を中心とした国立大学群が、産業構造改革などによってこの地域が未来型の都市へと変貌するための大きなドライビングフォースとなり、資金等の好循環を実現して、大学自身も大きく発展する構想を描いています。
 

世界は今、デジタル革命ないし第4次産業革命といわれる時代に突入し、今後も、これまで考えられなかったような規模とスピードで社会が変わっていきます。また、日本は深刻な少子高齢化に直面しており、その一方で寿命はどんどん延びています。人類社会の抱える課題は、気が遠くなるほど、多様でかつ複雑です。ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットンさんは、著書『ライフシフト:100年時代の人生戦略』の中で次のように言っています。「17世紀の政治思想家トーマス・ホッブスは人生を『不快で、残酷で、短い』といったけれども、それよりひどい人生は一つしかない。それは『不快で、残酷で、そして長い』人生である。」と。未来社会を多様で、インクルーシブで、持続可能なものにしないと、人生は『不快で、残酷で、そして長い』ものになってしまうでしょう。これから、実際に社会がどう変わり、我々の人生がどうなるのかを正確に予測するのは難しいところですが、皆さんには、是非、名古屋大学で学んだことを土台にして、人類社会の幸福と持続的発展に貢献する人材、すなわち「勇気ある知識人」に育っていただきたいと心から願っています。
 
 以上、皆さんの今後の大いなる活躍と成功を祈って、私からの祝辞といたします。本日はご卒業、おめでとうございます。