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総長のことば

平成30年度大学院入学式祝辞

 

皆さん、名古屋大学大学院への進学、おめでとうございます。皆さんは、これまで培ってきた力を一層磨き、より大きく成長するために、名古屋大学大学院に進学されました。本日ここに、2,225名の皆さんを、新しい仲間として迎えられたことを、総長として、心から嬉しく思います。

 

皆さんは、これからの日本および世界を創り、リードしていく人材として、大きな期待を背負っています。大学院は、皆さんが自分の夢に向かってチャレンジし、飛躍する場でもあります。皆さんの夢が大きければ大きいほど、厳しさもより大きく、立ちはだかる壁もより高いと思います。そのような場に一歩足を進めた皆さんの勇気を、心から賞賛したいと思います。皆さんが名古屋大学での大学院生活を始めるにあたり、総長として、また、一人の先輩として、皆さんに歓迎と激励の言葉を贈りたいと思います。

 

名古屋大学の人材育成の目標は、「勇気ある知識人」を育てることです。「勇気ある知識人」とは、高度な専門知識や技術に加えて、社会貢献の高い志と幅広い視野、多様性を理解し、受け入れる広い心、そして物事を動かしていく、リーダーシップなどの資質を持ち、人類的な課題と向き合って果敢に挑む人材であると私は考えています。

 

世界は今、多様な価値観や異文化が交錯し、21世紀に入ってから、これまでの常識では想像できなかった出来事が次々に起こっています。また、我が国では、世界でも類をみない超高齢社会がすでに到来しており、国の将来に対する不安が広がっています。国の内外で、解決すべき課題は山積しています。一方で、人類社会は今、第4次産業革命の時代にあるといわれ、今まで以上にその変化は早く、かつ激しいものになると予測されています。第1次産業革命は狩猟社会から農耕社会への転換、第2の産業革命はご存知の通り、蒸気機関の発明などによる農耕社会から工業社会、あるいは、ものづくり社会への転換、そして、第3次産業革命では、エレクトロニクス、電子機器、パソコン、スマートフォンなどの普及により、情報社会になりました。そして、このような情報の急激な普及は、急速なグローバル化をもたらしました。
 第4次産業革命では、飛躍的に増えるデータ量とともに、あらゆる情報がデジタル化されてつながり、ビッグデータの解析や人工知能の活用により、「データから新しい価値が生まれる時代」になります。石炭や石油など自然の資源ではなく、データそのものが貴重な資源になるのです。このような時代はすでに始まっています。人工知能が活躍し、社会全体がスマート化され、産業だけでなく人の生き方も一変し、知識や情報を基盤とする時代になるのです。
 このような社会においては、何のために、どのようなデータを、どのような方法で集め、どのような解析をするのか、目的とビジョンが必要です。言い換えれば、社会の目標や未来社会のビジョンを明確に持つこと、すなわち、未来社会のグランドデザインが極めて大事です。そのため、人類の持続的発展と、すべての人が幸福に暮らせる社会の実現に向けて、多様な人たちが自分の専門領域を越えて連携や共同作業を行うことが必要になります。多様な人たちが、働く場所や分野、領域を問わず、思う存分活躍する社会を実現しなければ、日本は世界の潮流から大きく取り残されるでしょう。

 

名古屋大学は人類の英知を集め、新しい知的成果を創出し、日本と世界の未来ビジョンを描いて、積極的に提言する使命を社会から負託されています。未来社会のビジョンづくりには、理工系だけでなく、人文学や社会科学の研究者の果たす役割も大変大きいものがあります。分野の異なる人々が集い、そこから新しい価値を創造していくことが極めて重要です。広く世界を見てみると、新しい領域への挑戦からは、常に新しい価値が創造されています。総合大学である名古屋大学は、様々な専門分野の人たちが議論をし、協働して学問を深めることにより、次世代に向けた新しい価値の創造に貢献したいと考えています。

 

このような考えのもと、名古屋大学では、キャンパスの多様化を積極的に進めており、女性の活躍促進のための様々な施策や、社会や産業界との連携に積極的に取り組んできました。現在、キャンパスの学生の8人に1人は外国からの留学生であり、また、多くの名大生が在学中に海外留学を経験しています。研究者同士の国際交流も盛んです。また、真理を探究する基盤的な研究に加え、産業界との連携も盛んに行われており、社会との連携は日増しに強まっています。

 

日本は20世紀後半から現在に至るまで、ものづくりによる産業の集積において、世界で最も成功した国であり、特に名古屋大学が位置する東海地区あるいは中京地区は、長年にわたりその中心となってきました。しかしながら、今の繁栄を維持し、さらに発展させるには、未来に向けて挑戦し続けることが重要です。私たちは未来に向けて新しい価値を創造しなくてはなりません。名古屋大学は21世紀の新しい時代の先頭に立つリーダーを育てる責任があります。同時に皆さん一人ひとりには、未来を切り拓くリーダーになるという心意気を持ち続けていただきたいと思います。また、名古屋大学の進取の気性に富んだ自由闊達な学問の伝統を受け継ぎながら、新しい伝統と輝かしい未来を創り出してほしいと思います。
 名古屋大学の自由闊達な気風は、学術研究の面で卓越した成果をもたらし、21世紀に入ってからノーベル賞受賞者6名を輩出しました。これは世界的に見ても特筆すべき事実です。また、このような素晴らしい先達に続けとばかり、皆さんの先輩が素晴らしい研究成果を挙げています。

 

一方で、社会に飛び出した卒業生は、産業界を中心に素晴らしい活躍をされています。本日ご来賓としてお招きしておりますトヨタ自動車株式会社名誉会長で名古屋大学全学同窓会会長の豊田章一郎様をはじめ、現代日本の経済と社会をリードしておられる方を、きら星のごとく輩出しています。これら、アカデミアや産業界の先達は、皆さんの良い目標、あるいは、ロールモデルになるでしょう。

 

名古屋大学は昨年度末の3月20日に文部科学省から「指定国立大学」の指定を受けました。指定を受けることが重要なのではなく、応募にあたって提案した数々の大学改革を成し遂げてこそ、名古屋大学は真に、世界屈指の研究大学になることができます。そのためには、大学の構成員が一丸となって、新しい大学づくりに邁進する必要があります。その中で、皆さんは今日から共に歩む同志になります。皆さんにはぜひ、名古屋大学大学院での研究生活を通じて、「勇気ある知識人」に成長していただきたいと切に願っています。

 

皆さんが名古屋大学大学院で過ごすこれからの時間は、楽しいことよりも苦しいことのほうが多いかもしれませんが、まさに自分を鍛えて、大きく成長する絶好のチャンスです。ぜひとも、勇気と希望を持って前に進んでください。

 

名古屋大学での大学院生活が皆さんにとって、実り多く充実したものになるよう、強い願いを込めて、私からの祝辞といたします。本日は大学院進学、本当におめでとうございます。