名古屋大学基金

募金のお願い

大学の概要/学部・研究科

総長のことば

平成30年度大学院修了式祝辞

名古屋大学を卒業される皆さん、本日は、ご卒業まことにおめでとうございます。本日ここに、学部学生2,206名、大学院の博士前期及び博士後期課程1,824名、合わせて4,030名の皆さんが、名古屋大学を卒業します。皆さんはこの名古屋大学で、教員、友人、先輩など、多くの人に支えられながら、互いに切磋琢磨して大学院の課程を修了し、今日この日を迎えられました。心から祝福したいと思います。長い間、皆さんを温かく支えてくださった、ご両親やご家族の皆様にもお祝いを申し上げます。本日は、名古屋大学全学同窓会の会長で、トヨタ自動車株式会社名誉会長でもいらっしゃいます豊田章一郎さまにご臨席を賜っております。ありがとうございます。
 

皆さんは、名古屋大学大学院で、日々、大変忙しい毎日を送り、多くの困難に直面しながらも、それを乗り越えるたびに成長してきたはずです。キャンパスで研究と勉学に必死で取り組んでいる最中は、自分の変化になかなか気づきにくいものですが、大学院に入学した時と比べると、はるかにたくましく、また、人間的にも大きくなったと思います。卒業生の皆さんは、今、どんな気持ちで、卒業式に臨んでいるのでしょうか。
 

さて、世界は今、かつてない困難な課題に直面しています。そしてこれらは、人類共通の、そして互いに関連しあった複雑な課題でもあります。気候変動、環境破壊、高齢化、貧困と格差の拡大、経済危機、健康・医療問題、新たな感染症の流行、地域紛争等々、人類の持続的な発展を阻害する可能性のある極めて深刻な問題が山積しているのです。一方で、世界はデジタル革命ないし第4次産業革命の時代に入っており、新しい情報技術が急速に広まり、人類社会はかつてないスピードと規模で変化しつつあります。これらを適切かつ有効に活用できなければ、人類社会の矛盾と問題は拡大し続けることでしょう。これらの問題にどうチャレンジし、解決していくのかは、我が国のみならず人類社会にとって大きな問題です。国連は、2014年、これらの課題を17の項目に整理し、SDGs(持続可能な開発目標)として公表しました。また、世界中の著名経営者や国家要人が集まる世界経済フォーラムのテーマは、「グローバリゼーション 4.0: 第四次産業革命時代の新しいアーキテクチャの形成」でした。これらの目標達成には、科学技術の発展だけでは不十分で、人文・社会科学系も含めた人類の英知の総動員が必要であると考えられています。大学という場は、まさに多様な学問が存在し、様々な研究者や職員が活動している「多様性の塊のような場」といえます。大学に課せられた課題は、いかに叡智を結集して、人類が直面している課題にチャレンジし、解決の方策を提言できるかということだと思います。皆さんは、大学院在学中、専門の知識や技術を身につけるとともに、多様な人々と交流する場面も多くあったのではないでしょうか。
 

名古屋大学のキャンパスは、多様な人々とコミュニケーションをとることができる大変貴重な場であると思います。互いを理解しあうことは、人間同士の垣根を低くし、互いを尊敬しあう第一歩だと思います。そのような中から、連携や協力が生まれ、素晴らしいヒューマンネットワークができ、多様でありながらも円滑で自然な環境、すなわち、インクルーシブな環境を作ることができると思います。ヒューマンネットワークは、新しい価値を創造する上での重要な基盤であり、皆さんひとりひとりの人間力を格段に高めます。皆さんは、名古屋大学で豊かなヒューマンネットワークを築けたでしょうか。このネットワークは卒業後の長い人生で、皆さんを豊かにしてくれる大きな財産になります。いつまでも大切に、そして、さらに充実させてください。
 

次に、「一歩踏み出す勇気」についてお話しします。2014年に天野浩先生らとともにノーベル物理学賞を受賞された赤﨑勇特別教授の「われ一人、荒野(あれの)を行く」という言葉は、今でも私の心の中に強く残っています。この言葉は、強い信念で物事を貫く覚悟の大切さを教えてくれます。20世紀中には不可能だといわれた青色LEDの発見は、人類社会を大きく変えた発明ですが、そこには高い目標を掲げ、信念を貫いて研究を続けられた赤﨑先生と天野先生らの不屈の精神が読み取れます。また、この教訓は次のようにも言えるでしょう。すなわち、「努力なしの偶然の発見はない」ということです。いつも目標を持って努力していないと、偶然の幸運も見逃され、せっかくのチャンスも逃げてしまうと思います。私の座右の銘である、「練習千日、勝負一瞬」、という言葉にも通じます。
 

さて、皆さんの母校である我が名古屋大学は、これまでも数多くの改革を行い、発展を続けてきました。そのような努力が認められて、昨年(2018年)3月には、文部科学大臣から、「指定国立大学法人」として指定を受けました。これまで名古屋大学を含めて6つの大学が指定を受けています。指定国立大学法人は、日本のトップ大学というブランドであるとともに、「世界屈指の競争力ある大学を目指すポテンシャルがある」と国が認めたものでもあります。ポテンシャルを活かすためには、大学全体として、不断の改革の努力とそれをやり遂げる強い意志が必要です。また、産業界、国や自治体、地域社会との緊密な連携も必要です。私たちは現状に満足せず、大学をより発展させて世界屈指の研究大学にし、最終的には日本と人類社会の持続的発展と幸福な社会の創造に貢献すべく、まさに今、大きなチャレンジを始めています。教育、研究、国際化、社会連携、管理運営、財務経営の各方面での思い切った改革、そして岐阜大学との法人統合による東海国立大学機構設置に向けた取り組みなどは、果敢なチャレンジの一例です。そして、このような改革を、ぜひとも成功させたいと考えています。それにより、名古屋大学の教職員や同窓生、そして地域社会の方々に、一歩前に出る勇気を与えたいと思っています。皆さんには卒業後も、母校の動向を見守っていただくとともに、同窓生として名古屋大学と密に接触を保ち続けていただけたら幸いです。
 

最後に、名古屋大学の周年事業についてお話ししたいと思います。皆さんが卒業する今年は、奇しくも、1939年に名古屋帝国大学が設置されてから80年目にあたります。今、キャンパスの一部には、創立80周年を祝うフラッグやポスターが飾ってあります。そして、再来年(2021年)は、1871年(明治4年)に名古屋大学の源流である仮医学校・仮病院ができてから150年目にあたります。その真ん中の年である2020年、すなわち、来年は、東京オリンピックの開催される年でもありますが、現在構想中の岐阜大学との法人統合により「東海国立大学機構名古屋大学」としてスタートする予定の年でもあります。名古屋大学は、創立80周年あるいは創基150周年にあたって、将来の発展を見越し、新しい大学としてスタートします。もちろん、新しい法人においても、伝統ある名古屋大学の名前は残りますし、指定国立大学法人という名称も、名古屋大学が保持することに変わりはありません。東海国立大学機構では、将来、名古屋大学を中心とした国立大学群が、産業構造改革などによってこの地域が未来型の都市へと変貌するための大きなドライビングフォースとなり、資金等の好循環を実現して、大学自身も大きく発展する構想を描いています。
 

先ほど申し上げたとおり、世界は今、デジタル革命ないし第4次産業革命といわれる時代に突入し、今後も、これまで考えられなかったような規模とスピードで社会が変わっていきます。また、日本は深刻な少子高齢化に直面しており、その一方で寿命はどんどん延びています。人類社会の抱える課題は、気が遠くなるほど多様で、かつ複雑です。ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットンさんはその著書『ライフシフト:100年時代の人生戦略』の中で次のように言っています。「17世紀の政治思想家トーマス・ホッブスは人生を『不快で、残酷で、短い』といったけれども、それよりひどい人生は一つしかない。それは『不快で、残酷で、そして長い』人生である」と。未来社会を、多様で、インクルーシブで、持続可能なものにしないと、人生は、『不快で、残酷で、そして長い』ものになってしまうでしょう。これから、実際に社会がどう変わり、我々の人生がどうなるのかを正確に予測するのは難しいところですが、皆さんには是非、名古屋大学で学んだことを土台にして、人類社会の幸福と持続的発展に貢献する人材、すなわち「勇気ある知識人」に育っていただきたいと心から願っています。

 

以上、皆さんの今後の大いなる活躍と成功を祈って、私からの餞(はなむけ)の言葉といたします。本日はご卒業、おめでとうございます。