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総長のことば

平成31度大学院入学式祝辞

新入生の皆さん、名古屋大学への入学、おめでとうございます。本日、ここに2,211名の皆さんを、大学院生として名古屋大学に迎え入れることになりました。名古屋大学の全構成員を代表して、心から歓迎します。満開の桜の花も、皆さんを歓迎しているようです。また、本日は、名古屋大学全学同窓会会長であり、トヨタ自動車株式会社名誉会長でいらっしゃいます豊田章一郎様にご臨席を賜っており、厚く御礼を申し上げます。豊田様には後ほどご祝辞をいただきます。

 

皆さんは今日から、未来への希望を胸に、この名古屋大学大学院で新たな生活を始めます。大学院では、これまでの勉学を基礎に、より高度な知識や技術の習得をするとともに、より広い視野で新しい価値を創造する力を育てます。皆さんが本学大学院で活動を始めるにあたり、総長として、そして、皆さんの先輩として、メッセージを贈りたいと思います。

 

まず、大学院で皆さんが学ぶことの意義、研究することの意義についてお話します。
地球上のすべての人が幸せに暮らすことができる社会の実現、そして、そのような社会が持続するような世界の実現は可能でしょうか。何がそのような世界の実現を妨げているのでしょうか。国際連合は、2015年の国連サミットで、2016年から2030年までの15年間で持続可能な世界を実現するための17の目標と169のターゲットを採択しました。ここには、貧困や飢餓、不平等、健康と医療、ジェンダー、エネルギー、気候変動など、人類が直面するすべての課題が掲げられています。これらは、持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals、SDGsとして公表され、世界中で課題解決に向けた取り組みが進んでいます。そして、この取り組みには、「地球上の誰一人として取り残さないこと」、「発展途上国だけでなく、先進国自身も普遍的な課題として取り組むこと」が明記されています。つまり、SDGsは、地球上のすべての国や人々が目指すべき人類の目標として定められ、人類自らの幸福や持続的発展を勝ち取るために、全人類が協力して取り組もうという壮大な構想です。また、ここでは、狭い意味でのサイエンスやテクノロジーだけでなく、人文・社会科学系も含めた広い意味での人類の英知の結集が求められています。現代社会において、知の源泉である大学は、これらの課題解決のために、知的成果を拡大・再生産し、それを社会に還元していく崇高な使命を担っていると思います。そして、本学は、まさにこのような人材を育てるべく「勇気ある知識人の育成」をその教育理念で謳っています。本学は、これまで、大学院教育改革の試みとして、ひとりひとりの学生が、専門とする領域の知識や技術だけでなく異分野にも目を向けて広い視野を持ち、多様性を理解して許容し、協働することによって新しい価値を創造する人材育成を行ってきました。昨年創設した博士課程教育推進機構は、このような試みを全学に広げるための組織で、既に多くの成果が挙がっています。名古屋大学大学院の一員となった皆さんには、是非、これからのキャンパスライフで、人類が直面している課題を意識し、高い志をもって、自分自身の才能や能力を存分に発揮できるよう、目標をもって学んでほしいと思います。

 

皆さんはこれから、日々、勉学や課外活動に大変忙しい日々を過ごすことになりますが、その中で、常に意識してほしいと思っていることをアドバイスします。それは、「どんな場面でも、勇気を持って取り組む」ということです。主体性なく、大勢に従って決めることは、自分の成長にとってプラスにはならないというのが私の経験則です。「やるかやらないか迷ったらとりあえずやってみる」勇気が必要です。日々の小さな勇気は、やがては、新しい世界に飛び込む勇気、自分とは違う多様な人たちを理解し、共同で作業する勇気、自分の専門領域を超えて学ぶ勇気、リーダーシップをとる勇気として皆さんの中に大きな根を下ろすはずです。そして最終的には、人に対する深い愛情と、社会貢献の高い志を持ち、広い視野で物事を考え、多様な人々と協働しながら率先して課題解決に果敢に取り組むことのできる人物、すなわち、「勇気ある知識人」に育つものと確信しています。是非、「小さな勇気」を持つことを、日々、実践してほしいと思います。

 

次に、「自由闊達」ということについてお話します。名古屋大学は21世紀に入ってから6名のノーベル賞受賞者を輩出するなど、学術の領域で数多くの素晴らしい研究者を送り出してきました。また、経済界でも、豊田章一郎様をはじめ、数多の素晴らしいリーダーを生み出しています。この理由のひとつとしてよく言われているのが、名古屋大学の伝統である「自由闊達な学風」であります。

 

名古屋大学が最後の帝国大学として新しい歴史を踏み出したのは、80年前の1939年でした。以来、多くの先輩の努力、国や地域、地元経済界からの熱い支援を受けながら、数多くの試練を乗り越えて、今日まで発展してきた歴史があります。特に創立当初は、人材不足も深刻だったため、全国から優秀な若手・中堅を中心に多様な人材を集め、その人たちが混ざりあう中で、学問領域や上下の隔たりなく、切磋琢磨するような環境ができてきたのです。そして、自然と、自由闊達な気風が醸成されたのです。新しい学問の成果は、多様な研究者が学問領域を超えて、型にはまらない発想を基に連携していく中で生まれるといわれています。名古屋大学は、まさにそのような形を先取りしたのかもしれません。そう考えると、ノーベル賞に代表される名古屋大学の多くの知的成果は、文字どおり「自由闊達な学風」の賜物だったといえるでしょう。しかしながら、私は、このような学風は、努力せずに放っておくと風化するおそれがあると思います。その時々の学生や教職員、そして大学の幹部が、しっかりと意識して積極的に守り、発展させてこそ、伝統は新しい形で次代に受け継がれると考えています。新大学院生の皆さんには、一緒に新しい歴史を作っていく大切な仲間、いや、主人公の一人になっていただきたいのです。それには、自由闊達な議論やコミュニケーションが必要です。皆さんには、是非、名古屋大学の歴史に新たな1ページを加えるような、自由でみずみずしい活動を行っていただくよう、強く期待します。

 

ここで、ダイバーシティーとインクルーシブネスのお話をしたいと思います。名古屋大学のキャンパスは、多様性に富んでいます。ここには常時、全世界100ヵ国以上から集まった2,000名を超える留学生がいます。おおよそ8人に1人が留学生であるということになります。日本人学生も、そして留学生も、ほんの少しの勇気さえ持てば、多様で多彩な交流ができ、キャンパスライフは全く違ったものになるでしょう。

 

名古屋大学では、また、代々の総長のリーダーシップや教職員の熱い思いが受け継がれ、ジェンダー平等の取り組みがかなり進んでいます。また、障害者やLGBTにも大学としてしっかり向き合うようにしています。さらに、様々な教育プログラムが組まれ、学生や教員が海外で学び、研究することも、年を追うごとに盛んになっています。国内においても、地域社会や企業との交流が積極的に進められています。

 

私はこのような名古屋大学の姿を表現する際、「名古屋大学は多様性の塊である」と言っています。しかし、多様な人々が存在し、多様な活動を行っているだけでは、新しい価値の創造はできません。私は、「多様性の塊」である名古屋大学が、多様性を尊重しながらストレスなく協調し、協働し、新しい価値を作り出す場にならないといけない、すなわち、多様性を超えたインクルーシブなキャンパスにならないといけないと思います。そのためには、今よりももっともっと、学内での意思疎通や交流が必要ですし、大学の外の世界へのアプローチも必要です。そしてこれは、何も学生に限ったことではありません。すべての教職員に言えることでもあります。ここでも、変わろうとする勇気が必要です。

 

最後に、名古屋大学のこれからについてお話します。本学は今、新たな発展のチャンスをつかもうとしています。これまで取り組んできた様々な教育・研究などの事業の多くが、高い評価を得ています。国や社会に対して約束したことを着実に実現する大学であることを、私たちは大いに誇ってよいと思います。そして、昨年3月には、世界と伍して競争できるポテンシャルを持った大学のひとつとして、文部科学大臣から、指定国立大学法人に指定されました。いわば、新しいブランドを獲得したといえます。

 

本学は今、このような上昇気流を捉えて、未来に向かって一層発展すべく、多くの改革に取り組んでいます。その取り組みの一つが、現在進めている岐阜大学との法人統合による東海国立大学機構の構想です。

 

今、世界はデジタル革命や第4次産業革命といわれる大きな変革期にあり、かつて、人類が経験したことのないような規模とスピードで社会の変化が進んでいます。社会も、産業も、大学もすべてが新しい時代に対応できるよう、変わらなくてはなりません。様々な英知が結集している大学は、未来社会を予測し、社会の変革をリードする役割を果たす必要があります。社会を変えるほどの大きなインパクトを持つことは、名古屋大学だけでできるものではなく、アカデミアの結集が必要です。このような考えの下、本学は、複数の国立大学法人を一つの法人の下で戦略的に運営する「東海国立大学機構」の設置を呼びかけ、考えを同じくする岐阜大学との間で、新たなチャレンジを行うことにしました。それは、未来社会の創造に貢献する新しい大学の形をつくろうという試みです。その構想の中では、未来型の大学教育の開発や、世界的研究拠点の拡大、社会連携や国際化の一層の推進などを描いています。

 

行く手には様々な困難が待ち構えていると思いますが、これまでの発展の歴史に学び、多くの人の理解と支援を得ながら、大いなる勇気をもって取り組んでいきたいと思っています。私たちひとりひとりの志と勇気、そして組織としての志と勇気、これらが一体となったところで、人類社会にとって価値ある名古屋大学が創造できるものと考えています。

 

新大学院生の皆さんは、まさにそのような変革の時期に本学に入学・進学したことになります。是非、未来を見据えて、一緒に学び、研究しましょう。本日は、ご入学、ご進学、まことにおめでとうございます。