2017年は一人ひとりがその才能と能力をフルに発揮する年に

新年あけましておめでとうございます。

年頭にあたり、今後の名古屋大学を展望してみたいと思います。

私は2015年4月に総長就任後、任期中の目標をNU MIRAI 2020 (Nagoya University Matsuo Initiatives for Reform, Autonomy and Innovation 2020)としてまとめ、社会に公表しました。この中で、「名古屋大学を世界屈指の研究大学に」するという目標を掲げています。そのために最先端の研究を行い世界屈指の知的成果を生み出すことや、それを支える次世代の研究者を育成することはもちろんですが、卒業生の多くは社会に出て様々な世界で活躍することから、社会貢献の高い志をもち、高度の専門性と幅広い視野に基づいて、リーダーシップを発揮できる人材、すなわち「勇気ある知識人」を育成することが重要な責務です。NU MIRAI 2020に掲げた4つの柱(教育、研究、国際化、社会連携)を推し進めること、そしてそれを持続的継続的に実行していくための5本目の柱、財務経営・組織改革が必須であると考えています。

私の総長としての任期は最長6年ですが、ホップ、ステップ、ジャンプで例えるなら、最初の2年、ホップの時期は間もなく終わろうとしています。この間、大学の組織改革をはじめ重要な課題に取り組み、教職員の皆さんとともに全力で走ってきました。この過程で部局や教職員の皆さんとの直接対話により大学の現状をおおむね理解でき、またコミュニケーションがとれつつあることは大きな収穫でした。今年4月からはステップの時期となりますが、指定国立大学法人や卓越大学院という大きな課題、ある意味では名古屋大学の将来にかかわる重要な課題が待っています。これらは国から投げかけられた課題ではありますが、名古屋大学の戦略の中に位置付けて積極的に対応する必要があります。とりわけ大事なことは、「将来どの様な名古屋大学にするのか」について次世代を担う層が自律的に考えるきっかけにすることです。そしてジャンプの時期には、世界に向けて大きく打って出ることができるようにしたいと、決意を新たにしています。

将来像を考えるときに、最近では「バックキャスト」のコンセプトが提唱されています。すなわち、目標としてのあるべきビジョンを想定し、それに到達するための方策を考え、最後に必要な組織のあり方を考えます。そうすると、現状とのずれやギャップがあらゆるところで生じます。これを総合的に分析して、一つ一つ戦略的かつ計画的に埋めていくことにより目標に到達しようとするものです。指定国立大学法人のコンセプトはまさにバックキャストで考えるべきものです。10年後、20年後の名古屋大学はどうあるべきか、をまずビジョンとして共有し、それに到達するにはどうすればよいか、戦略を立て実行するのです。2017年をスタートするにあたって、ぜひ名古屋大学の総長・役員と教職員・学生など構成員一人ひとりが未来の名古屋大学のビジョンや実現方策を考え、対話により共有し、実現に向けて協調することを理想とします。以下は現時点で総長として考えている名古屋大学の未来像に向けた課題です。

 

NU MIRAI 2020で掲げた柱の一つは教育です。私は世界標準の教育を確立することを目標にしています。我々自身が名古屋大学で学ぶ学生の将来像をしっかりとイメージしておくこと、名古屋大学が養成する人材像を明確にして教職員が共有すること、が重要です。社会のどの様な領域に進んでも、勇気ある知識人としての資質と能力を発揮できる人材という抽象的なイメージを、具現化する必要があります。その上で、学位ポリシー>カリキュラムポリシー>アドミッションポリシーの順でバックキャスト的に3つのポリシーを一体的に改革していく必要があります。ともすれば教育は教員側の一方的な思い込みで進めがちですが、学生のニーズや考え方をしっかりと把握したうえで物事を進めていくことが重要です。これら一連の過程は、しっかりとしたデータに基づいて設計する必要があり、そのためには教学IR(インスティテューショナル・リサーチ)という機能が必要になります。名古屋大学は国際標準の教育を掲げていますが、この観点からも広く世界の高等教育の現状を研究する必要があります。国際標準の教育に到達するには、英語能力の向上はもちろんのこと、様々な要素を考える必要があります。世界における競争力を獲得するために何が必要か、科学的に戦略を立てなければなりません。教学IRも教育の国際化も大変な労力を要する作業ですが、名古屋大学が世界の研究大学として卓越した人材を獲得し、勇気ある知識人として育成していくため、どうしても必要なものです。昨年(2016年)4月に組織改編により発足した教育基盤連携本部では、教学に関するIRを行いながら、名古屋大学全体の教育の在り方を再検討し、上記のような目標達成に挑もうとしています。

現在実施されている6つのリーディング大学院の成果を、プログラム終了後に限られた予算の中で生かす方策と、より多くの学生がその恩恵を受けられるようにする仕組みづくりが重要です。これについては、高等教育支援機構(仮称)を教養教育院に一体的に設置して、リーディング大学院で担っている共通部分の教育事業を効率的に進める構想を持っています。

 

研究においては、名古屋大学は21世紀に入ってから6名のノーベル賞受賞者を輩出し、国際的にもその研究力が注目されています。今後も研究大学として世界屈指の知的成果を挙げることは名古屋大学の使命であります。創造的な研究を行うためには、研究者あるいは研究グループの自由な発想に基づき、知的成果を挙げるのが原則です。研究は、物事の真理を明らかにし、新しいものを発見・創造し、社会のイノベーションや進歩に貢献していく、という極めて創造的な所作です。しかし、これを大学全体のレベルあるいは部局レベルで見ると、研究マネジメントがどうしても必要になります。すなわち、世界屈指の研究大学の戦略と取り組みを加速させるために、国際的に競争できるコアコンピテンシーを設定し、財源・人材の確保と配分、効率的な研究推進、評価と戦略の修正、という一連のプロセス(すなわちPDCA)をしっかりと進めていく必要があります。名古屋大学では多くのコアコンピテンシー、言い換えれば高い国際競争力を持った研究者やグループ、研究領域が存在します。これらを持続的に発展させる、そしてまたこれらに続く新しい研究者やグループを育成していくことが、世界屈指の研究成果を挙げるために必要です。一方で、研究に関して厳しい取捨選択が必要になると思います。名古屋大学では様々な取り組みがすでに行われていますが、新たなステージに名古屋大学を押し上げるために、再度総点検(研究の棚卸)をして、質量ともにより高いレベルの知的成果の創出に挑む必要があります。

今後の重要課題として平成30年度から始まる卓越大学院制度では、領域を超えた連携による新しい研究領域の開拓や領域間の連携による知的成果の拡大(横の糸)、基礎から応用までの一貫した連携や研究マネジメント(縦の糸)、そして優れた博士人材に対する支援、が必要になります。これら縦横の連携と博士課程学生・ポスドク人材支援を有機的、戦略的に推進できるような柔軟な研究組織になれば、現時点からの大きな飛躍が期待できると考えます。未来に輝く日本社会を創造しけん引する中心的な人材として、卓越した博士人材の育成は名古屋大学の重要な責務であり、支援方策や博士人材のキャリアパスの確立を国や企業と協議して進めていくことは極めて重要な課題です。

以上のような研究マネジメントには、教学IRと並ぶ研究IRが必要であり、この機能に関する検討はすでに学術研究・産学官連携推進本部でURAタスクフォースプロジェクトとして始まっています。加えて重要な課題として、大学の裁量で差配できる運営費交付金など国からの基盤的経費支援は年々削減されているため、全学的な視野からの財源の配分や効率的な経費の使用、そして何よりも競争的資金や外部資金の積極的確保が絶対的に重要です。大学全体ではIRに関して、学内及び学外の情報を収集・分析し、大学の効率的・効果的な計画立案、戦略策定及び意思決定を支援するIR本部を設置したところであり、今後の機能の充実が急務です。

 

国際化・多様化の意義について、改めて強調したいと思います。まず、深刻な少子化問題と大学の国際競争力の低下という現実の中で、名古屋大学に入学する学生の質を維持し高めることは容易ではなく、相当な努力をしなければ優秀な学生を取り続けることができません。その際国際化や多様化は、優秀な学生を日本及び世界からリクルートするときに大きな魅力となります。第二に、グローバル化の観点でいえば、学生は大学入学や卒業後の社会において、好むと好まざるとにかかわらず国際社会とのかかわりが余儀なくされています。グローバルな環境は日本でも当たり前の風景になりつつあります。第三に社会的価値の創造という点では国際的な視野を持ち、多様性(国、人種、宗教、文化、性など)を理解し、受け入れ、協働することが重要です。異なる背景の人たちが協力して進める研究は、新たな人類普遍の知的成果を挙げるうえで必須であると考えています。この点で名古屋大学の特徴として男女共同参画を強力に進めてきたことは、国連からも評価されていますが、女性のエンパワーメントの意義と展望について、世界の情勢を見ながら認識やビジョンを共有することが、名古屋大学にとって大きな課題です。このような発想に立つとき、将来の名古屋大学像に照らして国際化・多様化は、未来の名古屋大学の創造に大きな示唆を与えるインパクトになります。

Top Global University(スーパーグローバル大学創成支援)事業において、名古屋大学は拠点として、目標を掲げてその実現に取り組んでいます。これは資金を取るための押し付けられた目標ではなく、名古屋大学自身が世界屈指の研究大学として成長するための自己目標である、と考える必要があります。この中で、名古屋大学はアジアのハブ大学になるという目標を掲げています。その心は、日本が立脚しているアジア地域の大学や研究機関、そして優秀な若手人材・学生とともに学び、世界に挑んでいく、「Study with Asia, and Challenge to the World」ということです。アジア諸国も自国やアジアだけを見ているわけではありません。世界への展開を展望しています。今後如何にアジアと協調し、一緒に世界に挑戦していくか、がキーポイントであり、世界屈指の研究大学になるという目標と何ら矛盾はなく、むしろ戦略として重要であると考えています。

名古屋大学はすでに20年以上にわたり、アジア地域との連携、人材交流・育成、共同研究などを積極的に進め、強力なネットワークを形成しています。これらは文部科学省をはじめ外部からはたいへん高い評価を得ている事業です。今後財政状況が厳しくなる中で、如何に効率化と経費削減を図るかが大きな課題ではありますが、他方でこの財産をどのように積極的に活用していくか、全学的な理解を得、また外部資金の獲得も画策しながら一層積極的な展開をしたいと考えています。上述のような意味で、現在、検討を進めているアジア共創教育研究機構(仮称)の成否は、名古屋大学にとって極めて重要であると考えています。このことはまた、これまでの成果の上に社会科学系や融合領域系の研究科を中心に人文系や自然科学系の諸領域とも連携した「新たな価値創造のための教育研究」を展開する重要なプラットフォームになることを目指しています。

 

社会との連携では何といっても産学(官)連携の進展が中心的な課題です。名古屋大学は、産業界(企業)や他の研究機関などと連携しながら、如何に新しい価値創造に貢献できるかが問われています。名古屋大学ではまず、研究・産学官連携を支援する部門を統一して基礎から実用化までシームレスに機能する組織改革を行いました。これによって生まれた学術研究・産学官連携推進本部は、教員の皆さんとの協働で、4年前に比べ共同研究の額を2倍、知財収入を10倍に増やすことができています。今後も高い目標を目指したいと考えています。またこのような共同研究あるいは事業は次世代産業に結び付く可能性のあるものが数多く含まれており、その意味ではそれに対応する新しい人材の育成が求められます。これから進めようとしている産学協同プロジェクトにおいては、必要経費を透明化する指定共同研究制度、また博士課程学生(PhD Candidates)をプロジェクトでフルタイム雇用すると同時に学位取得も可能にする制度、企業や海外研究機関とのクロスアポイントメント制度、などの試みを本格化させ軌道に乗せたいと考えています。また博士課程学生には、積極的にこのようなシステムに加わるとともに、学内でも学生が比較的自由に希望するプログラムに入れるような柔軟な構造に変えていく努力が必要であると思います。

 

最後に、これらの目標を達成するために必要な大学のマネジメント及びガバナンスのあり方について、指定国立大学制度も念頭に置き、課題を提起したいと思います。

第一は、財源の確保や配分、成果の管理も含めたマネジメント力の強化です。名古屋大学がミッションや目標の達成のために諸事業を計画的・継続的に進めてゆくためには運営費交付金以外の独自財源・外部資金の確保がどうしても必要です。努力したところにはインセンティブを付与するシステムも課題です。また、財源や人的資源の有効活用もきわめて重要な課題です。優秀な人材の確保、公正な部局及び教員評価、運営や成果管理など、大学全体のマネジメントと並んで、部局のマネジメントの工夫が生きるような仕組みに作り替える必要があります。大学及び部局ガバナンスの強化のための新しい仕組みも検討する必要があると思います。本部ではこれらの企画や支援を強化して財源を飛躍的に拡大し、運営費交付金の減少に対応するとともに、大学が必要とする事業に有効に投資して、名古屋大学を強化していきたいと思います。

第二は、人事労務制度の改革です。名古屋大学では様々な職種があり、それぞれに承継・非承継、任期なし・任期付き、正規・非正規、など複雑な雇用状況です。構成員一人ひとりが誇りをもって働き、その意欲や能力をいかんなく発揮できるためには、シンプルでわかりやすい人事制度、役割と責任や権限が明確な人事制度、無駄のない組織が必要です。また公正な人事評価に基づくキャリアパスの構築も未来の名古屋大学には必要でしょう。一人ひとりが名古屋大学の教職員であることを誇りに思い、最大限の能力を発揮でき、それが正当に評価され、キャリアパスに反映される制度を作ることは、重要な課題です。

第三は、生産性向上のための徹底した業務分析と合理化、そして組織改革です。私は今の名古屋大学の管理運営体制はまだまだ無駄が大変多く存在すると思っています。理想の形はどうあるべきか、ここから出発するとすれば、どの様な形があり得るのか、大学におけるこのような改革事例を他大学や海外にも学びながら、未来の名古屋大学を考える必要があります。事務組織を中心に管理運営システムの根本的な改革を進めたいと考えています。

第四に、今後の大学の管理運営にかかわる人材の育成・修練ということを考えています。大学のミッションや目標というのは短期で果たせるものではなく継続性と最適なマネジメントが必要です。そのために基本的な知識や組織の管理運営能力を備え訓練された人材を執行部や部局長にあてることが必須になります。このような人材を組織的戦略的に育成し、できれば全国の人材プールを作り、必要な人材を登用するようなことが可能になれば、より大学運営の透明化・効率化が図れると思います。

第五に、将来の日本の国立大学の姿を考えたとき、大学同士の連携、いや連携以上の機能統合が必須になるのではないかと考えています。今から緊密な大学間ネットワークを構築しておくことが極めて重要であると考え、具体的な連携事業を通じてまずは信頼関係の醸成を進めていきます。

 

以上、今後の名古屋大学の発展に向けて、そしてまた全構成員が誇りをもって教育、研究、支援、勉学に励むモチベーションを高く持てるような大学にするために、目標やミッションの共有をしながら前向きに進め、名古屋大学を昨年とは違った次元に高めていきたいと思っています。今年もよろしくお願いいたします。

 

総長

名古屋大学総長
総長

 

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