大学からのお知らせ

11大学の理事・副学長等連名による共同声明

2009年12月15日

行政刷新会議「事業仕分け」での科学研究費補助金の評価結果に対し、12月15日(火)、11大学の理事・副学長等連名による共同声明を発表しました。


大学の研究基盤の強化と未来を拓く若手研究者の育成のために(共同声明)

-平成22年度予算における科学研究費補助金の拡充について-

北海道大学理事・副学長 岡田 尚武
東北大学理事飯島 敏夫
筑波大学理事・副学長赤平 昌文
東京大学理事・副学長松本洋一郎
早稲田大学常任理事堀越 佳治
慶應義塾常任理事真壁 利明
東京工業大学理事・副学長伊澤 達夫
名古屋大学副総長渡辺 芳人
京都大学理事・副学長吉川 潔
大阪大学理事・副学長西尾章治郎
九州大学総長村上 敬宜

科学研究費補助金(以下「科研費」という。)は、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる分野にわたり研究者の自由な発想に基づく研究を支援する中核的な資金であり、また、若手研究者を育成する上でも不可欠なものです。
このような科研費の重要性については、事業仕分けの議論の中でも疑問が呈されることはなく、むしろ複数の仕分け人から科研費を増額すべきとの発言もありました。
しかしながら、今回の事業仕分けの評価結果としては、特別推進研究や新学術領域研究などが他の制度とともに「一元化も含めシンプル化」「予算は整理して縮減」とされ、若手研究(S)(A)(B)や、若手研究者の育成を目的とする特別研究員奨励費が他の制度とともに「予算要求の縮減」とされました。
学術研究の振興と若手研究者への支援が極めて重要であるにもかかわらず、このような評価が下されたこと、更に、それを踏まえた予算編成作業が進行していることに対し大きな危惧の念を抱くものであります。若手研究者さらには学生たちへと不安は広がってきており、その切なる声が大学運営の責任者に続々と寄せられています。問題は、現在の若手研究者の生活との関わりに止まりません。知の最前線に飛び込もうとする有為な若者の夢を失わせ、ひいては、日本の高度知識人材の再生産を困難にします。国際的にも日本の博士人材の乏しさがつとに指摘されていますが、加えて博士進学率の低下など、危険な兆しが既に随所に現れています。これを助長する政策判断は、「コンクリートから人へ」という現政権の理念と相容れるものではないはずです。
また、事業仕分けにて、基盤的経費の削減を是としない結論が示されたことは極めて正当なものでありますが、一方で、科研費などの諸予算における間接経費が、大学の教育研究の基盤形成に寄与・貢献する意義・必要性が理解されておりません。あたかも研究者個人の研究費の「中間搾取」がなされているかのような誤解が流布する状況は看過できません。
このような切迫した状況に鑑み、学術の中心であることを自らのミッションの要とする研究大学の現場において、研究活動に責任を負う理事・副学長有志11名が協議し、この声明を発表することとした次第です。
今後、平成22年度予算編成の過程において、下記の点の重要性を御理解いただき、科研費について、概算要求額を是非とも確保していただきたく強く要望します。

1. 若手研究者を励ます仕組みを守り、科研費の直接経費の削減を行わないこと

平成22年度の科研費概算要求額は「平成22年度概算要求の見直し」に伴い当初の要求額が抑えられ2000億円となりました。これでは、平成21年度の採択水準を維持することはできないことから、科研費の中核である基盤研究の新規採択率が最低でも20%を下回らないよう、公募中であった若手研究(S)や新学術領域研究(研究課題提案型)の公募が停止されたと承知しております。この公募停止は全国の研究者に大きな衝撃を与えております。
もし、直接経費がこれ以上削減されれば、平成20年度公募から基盤研究の研究期間が延長されたことによる後年度負担の増加に伴い、科研費の中核である基盤研究の新規採択率が20%を大幅に下回るとともに、優れた若手研究者の育成に重要な役割を担う若手研究(A)(B)の新規採択率が大きく低下することが予想されます。そのような事態になれば、研究者が採択を目指してよりよい研究に取り組もうとする意欲や、研究者への道に進もうとする若者の意欲を著しく低下させるとともに、科研費の競争的資金としての信頼性を失わせることとなります。
学術研究を支援する中核的な研究費である科研費において、こうした事態は絶対に避けねばならないと考えます。

2. 基盤形成に必須な間接経費の意義・必要性を正当に評価し、その削減を行わないこと

科研費においては、平成13年度から研究種目ごとに、順次、間接経費が措置されてまいりました。間接経費は、科研費などの競争的資金を獲得した研究者の研究環境の整備(研究費の管理・執行、研究施設の整備、光熱水料の措置など)や、当該研究機関全体の機能向上に活用するために、大学等の機関に対して交付される経費であり、研究者にとっても、機関全体にとっても、極めて重要なものです。
このような間接経費の重要性に鑑み、政府では、第三期科学技術基本計画及び教育振興基本計画において「間接経費30%措置の早期実現」を明記し、閣議決定されております。
各大学においても、間接経費は収入予算の主要な要素であり、国立大学法人運営費交付金や私学助成などの基盤経費が削減される中、研究環境を維持するための不可欠の財源となっております。大学関係者にとっては間接経費の確保は切実な問題となっており、またその拡充へ向けての取組を強く支持しております。
こうした点を踏まえると、間接経費の削減は、関係者のこれまでの努力と期待を裏切るものであり、絶対に容認できるものではありません。

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