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社会科学

2021.03.02

規制当局にとって、経営者(企業)に対して「強制的」に経営予測情報を開示させる方が良いのか、それとも経営者による「自発的」経営予測情報の開示に任せる方が良いのか?

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院経済学研究科の仙場 胡丹(せんば ふだん)准教授、張 暁白(元)博士後期課程学生、徐 泓 博士後期課程学生の研究グループは、規制当局にとって経営者に経営予測情報をルールなどに基づき「強制的に」開示させる方が良いのか、経営者による「自発的な」経営予測情報の開示に任せる方が良いのかという重要な政策的・実践的テーマに取組み、当該テーマへの検証が可能である中国市場における経営予測情報などの分析を通じて、自発的開示の方が、①経営者予想の予測正確性、そして②モデルに基づく将来情報への予測力という2つの側面において、強制的開示よりも優れていることを発見しました。

本研究では、「強制的開示情報」と「自発的開示情報」との情報の質について、差があることが示され、開示に関わる規制を策定する規制当局、開示情報を利用する投資者など、幅広い財務諸表利用者に学術的研究や政策的議論において、基礎的な実証結果を提供する役割を担うものとして期待されます。

この研究成果は、2021年2月19日に『Asia-Pacific Journal of Accounting & Economics』第28巻第1号において公刊されました。なお、同誌オンライン版に既に掲載されています。

この研究は、科研費・基盤研究(C)および国際共同研究加速基金(18K01932;16KK0078、研究代表者:仙場胡丹)の助成を受けたものです。なお、当該論文における英文校閲費用について、名古屋大学男女共同参画センターを通じて文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」の助成を受けています。

 

【ポイント】

・本研究では、実務界、ならびに学界(経営学や会計学)において、「強制的開示情報」と「自発的開示情報」との情報の質の差を明らかにすることが極めて重要であるにも関わらず、これまで検証データを持ち合わせていなかったため分析不可能と考えられてきた課題に対し、独自のデータを用いて分析し、実証結果を提示している。

・具体的には、「自発的開示情報」は、「強制的開示情報」よりも、①予測の正確性、そして②将来情報への予測力という2つの側面から、優れているという実証結果が提示されている。

・この具体的な実証研究結果は、同時に発生している「自発的開示情報」と「強制的開示情報」を比較できるデータ・セットを利用することにより検証可能となり得たことから、規制当局等に示唆を与えることができると考えられる。

・つまり、本研究の実証結果からは、規制当局にとって、経営者による自発的経営予測情報の開示に任せれば良いという結果が示されており、マーケットの見えざる手が機能していることが示唆される。

 

 ◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Asia-Pacific Journal of Accounting & Economics

論文タイトル:Mandatory vs. voluntary disclosure of management forecast in China

著者:Xiaobai Zhang, Graduate School of Economics, Nagoya University Hu Dan Semba, Graduate School of Economics, Nagoya University (Contact Author)Hong Xu, Graduate School of Economics, Nagoya University

DOI : 10.1080/16081625.2020.1845003

 

 【研究代表者】

大学院経済学研究科 仙場 胡丹 准教授

http://www.soec.nagoya-u.ac.jp/~kotan/