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情報学

2022.06.28

ロボットの好みがわたしの好みに? ―対話ロボットの操作者が受ける心理的影響の一端を解明―

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の窪田智徳特任助教(研究当時は大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程、日本学術振興会特別研究員)、小川浩平准教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の吉川雄一郎准教授、石黒浩教授らの研究グループは、半自律型ロボットの操作者において、自律対話機能をもつロボットの身体の一部のみを操作するだけで、操作者の態度(※1)はロボットが自律的に示す態度に近づくように変容することを明らかにしました。

人とロボットが一体となって共働するとき、人はロボットからどんな影響を受けるでしょうか?
近年、人がロボットを操作することで、例えば家にいながら異なる場所での対話に参加したり働いたりできる、遠隔操作型対話ロボットの研究や応用が盛んに行われています。そのなかでも、人による操作とロボットのもつ自律機能が共に支えあうことで効率よく働く、半自律型ロボットの有効性が示されてきています。例えば、ロボットは対話相手と自律的に会話して、人はそのロボットの移動などの身体動作を操作する場合など、様々な共働の形がありえます。このような場合、人は他者のように感じられるロボットを操作して、両者は一体となって振る舞うことになりますが、これを通じて人がどのような影響を受けるかはこれまで不明確でした。
人と対話するロボットの研究では、ロボットの対話相手への影響は多く調査されてきましたが、ロボットの操作を通じた操作者への影響はほとんど着目されていませんでした。半自律型ロボットの社会応用に向けて、本研究の知見は、操作を通じて操作者の態度をポジティブに維持できるシステムのデザインに応用することや、また操作者の無意識の態度変容の可能性に留意してロボットを運用する必要性を議論することに繋がると期待できます。
本研究成果は、科学誌「Scientific Reports」に、6月27日(月)午後6時(日本時間)に公開されました。

 

【ポイント】

◆ 自律的に人と対話するアンドロイドロボットの身体の一部を操作すると、操作した人の態度がロボットの態度に近づくという現象を明らかにした。
◆ 人が操作して使うロボットの有効性は様々に検証されてきており、そのなかでも、人による操作とロボットのもつ自律機能が共に支えあうことで効率よく働く、半自律型ロボットの有効性が示されてきています。しかし、操作をすることで、操作する人がロボットからどのような心理的影響を受けるかはほとんど注目されていませんでした。
◆ ロボットの社会応用に向けて、本研究の知見は、ロボットを操作する人の気分をポジティブに維持できる操作システムなどへの応用が見込めます。また、操作する人の態度が無意識に変化してしまう可能性に留意したロボット運用の必要性を議論することに繋がると期待できます。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

  
【用語説明】

※1 態度
本研究ではAllportの定義にのっとり、あらゆる対象・状況に対する、経験を通じて体制化された精神的な準備状態のことを指す。
(Allport, G. W. Attitudes, in A Handbook of Social Psychology (ed. Murchison, C.) 798-844 (Clark University Press, 1935))

 

【論文情報】

本研究成果は、2022年6月27日(月)午後6時(日本時間)に科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。
タイトル: “Alignment of the attitude of teleoperators with that of a semi-autonomous android”
著者名: Tomonori Kubota, Kohei Ogawa, Yuichiro Yoshikawa, Hiroshi Ishiguro
DOI:10.1038/s41598-022-13829-3
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-022-13829-3
なお、本研究の一部は、JST ERATO JPMJER1401とJSPS 科研費 20J13662の支援を受けて行われました。また本研究の成果は、著者自らの見解等に基づくものであり、所属研究機関、資金配分機関および国の見解等を反映するものではありません。

 

【研究代表者】

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