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生物学

2023.04.28

雪印メグミルク株式会社との産学協同研究講座において ビフィズス菌 Bifidobacterium adolescentis SBT2786 が睡眠を促進することを確認 -学術雑誌「Genes to Cells」に掲載されました-

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(総長:杉山 直、以下「名古屋大学」)と 雪印メグミルク株式会社 (代表取締役社長:佐藤 雅俊、本社:東京都新宿区、以下「雪印メグミルク」)は、協同で雪印メグミルク保有のビフィズス菌Bifidobacterium adolescentis SBT2786(以下、BA2786)※1が睡眠促進作用を有することを、ショウジョウバエを用いた研究で発見し、学術雑誌「Genes to Cells」に発表しました。
睡眠不足およびその蓄積である「睡眠負債※2」は、生活や仕事のパフォーマンスの低下、脳の働きの低下、糖尿病などの生活習慣病のリスクの増加など、心身に様々な悪影響を及ぼすことが知られています。また、日本人の睡眠時間は短い傾向にあるとされており、睡眠は我が国において社会的な関心の高い健康課題の一つです。
名古屋大学と雪印メグミルクは、2017年度に名古屋大学 大学院理学研究科付属ニューロサイエンス研究センターに産学協同研究講座「栄養神経科学講座」を開設し、睡眠をはじめとする“脳や神経”に関する健康課題を解決するための研究を推進してきました。
これまでに、当該協同研究講座ではヒトと共通する多くの行動・分子機構を備えているショウジョウバエを用いた研究において、雪印メグミルク保有の乳酸菌株Lactiplantibacillus plantarum SBT2227を餌として与えることで夜間の睡眠を促進することを見出しています。
さらに今回、ヒトや食品などから分離された乳酸菌・ビフィズス菌から、BA2786を最も睡眠促進効果を大きい菌株として選別し、BA2786の効果が加熱殺菌しても維持されることと、効果の一部はインスリン経路を介したものである可能性を明らかにしました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

※1 Bifidobacterium adolescentis(ビフィドバクテリウム アドレセンティス):ヒト成人の腸管に生存するビフィズス菌の優勢種の一つです。

 

※2 睡眠負債:睡眠不足が蓄積し、心身に悪影響が及ぶ可能性のある状態のことです。日本の睡眠不足による経済損失は880~1380億ドルでGDPの1.86~2.92% に相当するとの試算結果もあります。

 

【論文情報】

題 名:Behavioral screening of sleep‐promoting effects of human intestinal and food‐associated bacteria on Drosophila melanogaster
(日本語訳:キイロショウジョウバエにおけるヒト腸内細菌および食物関連細菌の睡眠促進効果の行動スクリーニング)
 
著 者:神 太郎1,2, 村上 弘樹1,2, 小林 俊二郎1,2, 上川内 あづさ1, 石元 広志1
1 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
2 雪印メグミルク株式会社
雑誌名:Genes to Cells 
DOI: 10.1111/gtc.13025
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/gtc.13025

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 上川内 あづさ 教授
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~NC_home/index2.htm