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数物系科学

2024.01.05

XRISM衛星が観測開始!〜世界最高精度のX線分光で宇宙の風を読む〜

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学素粒子宇宙起源研究所の中澤 知洋 准教授、三石 郁之 講師らの研究グループがその開発に参加しているX線分光撮像衛星(クリズム;X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission)による最初の観測結果であるファーストライト注3)が公開されました。XRISMは、JAXA宇宙科学研究所、NASA、ESAといった国内外の研究機関が共同開発している衛星です。このファーストライトは2023年9月7日の打ち上げ以降、約4ヶ月にわたる立ち上げ運用を終えて、ついに本格観測を開始したことを意味します。
X線分光撮像衛星XRISMは、X線の分光能力において世界最高性能を誇り、ドップラー効果を用いて宇宙に吹き渡る風を測る能力に優れています。たとえば銀河の中心の巨大ブラックホールからの風を測ることで、星の種となるガスを吹き飛ばして星生成を止めてしまう様子が解明できます。また、宇宙最大の天体で、我々の銀河と同じような銀河を数千個も含む「銀河団」同士が衝突合体する時に、高温ガス内にどれだけの嵐が吹き荒れ、その中で粒子加速が極めて大規模に起きる様子をこれまでとは桁違いの精度で測定できます。
本研究成果は、2024年1月5日のJAXA宇宙科学研究所、第23回宇宙科学シンポジウムで公表されます。

 

【ポイント】

・X線分光撮像衛星XRISM注1)から最初の科学観測であるファーストライトの結果が届いた。
・世界最高のX線分光能力で、宇宙の高エネルギー天体を観測できることを確認した。
・いよいよ本格的な観測を開始し、宇宙に満ちている高エネルギーガスの中を吹き渡る風をドップラー効果注2)で測定し、荒れ狂う宇宙の姿を明らかにする。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)X線分光撮像衛星XRISM:
銀河を吹き渡る風である「高温プラズマ」から発せられるX線を、かつてない精密な分光能力で撮像し、物質やエネルギーの流転を調べ、天体の進化を解明する、宇宙X線観測衛星。2023年9月7日に、種子島宇宙センターからH-IIAロケットで打ち上げられ、運用を開始したばかりの衛星。
注2)ドップラー効果:
波を発する物が動いている時に、波長がずれて観測される効果。身近な例では救急車のサイレンの音波の波長の変化が知られている。光も波であるため、こちらに向かってくるガスからのX線はより短波長に、遠ざかるX線はより長波長にずれる。XRISMのResolveはこれを高精度で検知できる。
注3)ファーストライト:
天体望遠鏡や宇宙望遠鏡(X線望遠鏡や赤外線望遠鏡も含む)が所定の性能に達しているかを確認するために行われる最初の試験観測。

 

【研究代表者】

素粒子宇宙起源研究所(KMI) 中澤 知洋 准教授

https://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/uxgj.html
https://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/gamma/nakazawa/pub/index.html