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生物学

2024.03.22

近赤外光で植物の細胞核を見る技術 ~遺伝子操作なしで解析、農作物への応用も期待~

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 (WPI-ITbM*)の中村 匡良 特任准教授、高等研究院の吉成 晃 YLC特任助教、礒田 玲華 博士研究員、八木 慎宜 博士研究員、佐藤 良勝 特任准教授、ウォルフ フロマー[FU1] 客員教授らの研究グループは、アメリカのカーネギー研究所のデイヴィッド エアハルト博士らとの共同研究で、植物の細胞核が近赤外波長域の自家蛍光を示すことを発見し、その自家蛍光が植物光受容体フィトクロムタンパク質に由来することを見出しました
さらに、近赤外領域の自家蛍光を利用することで、非侵襲的に植物の細胞核の動きを解析できることを新たに見出しました
本研究により発見されたフィトクロムを用いた近赤外自家蛍光イメージング法は、実験植物のみならず、普段手にするさまざまな植物の細胞核の動きを解析できる手法であり、核は遺伝子発現や細胞分裂に関わるため、まだ研究が進んでいない農作物などの核研究への応用が期待されます。
本研究成果は、2024年3月20日付、国際科学専門誌「The Plant Journal」に掲載されました。

 

【ポイント】

・植物の細胞核が近赤外波長域で自家蛍光注1)を示すことを見出した。
・近赤外自家蛍光は光受容体のフィトクロム注2)タンパク質に由来することを発見した。
・近赤外自家蛍光を利用した非侵襲的なイメージング法は、実験植物以外の植物にも適用できることから、農作物などへの応用が期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)自家蛍光:
生体内の構造や物質が光を吸収した際に起こる光の自然放出。
注2)フィトクロム:
植物に含まれる色素タンパク質。植物の光発芽、花芽形成、避陰反応など多くの重要な整理機能を制御する光受容タンパク質。

 

【論文情報】

雑誌名: The Plant Journal
論文タイトル:Near-infrared imaging of phytochrome-derived autofluorescence in plant nuclei
著者:Akira Yoshinari, Reika Isoda, Noriyoshi Yagi, Yoshikatsu Sato, Jelmer J. Lindeboom, David W. Ehrhardt, Wolf B. Frommer, Masayoshi Nakamura (下線は本学関係者)    
DOI: 10.1111/tpj.16699
URL: https://doi.org/10.1111/tpj.16699

 

※【WPI-ITbMについて】(http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp)
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、2012年に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の1つとして採択されました。
ITbMでは、精緻にデザインされた機能をもつ分子(化合物)を用いて、これまで明らかにされていなかった生命機能の解明を目指すと共に、化学者と生物学者が隣り合わせになって融合研究を行うミックス・ラボ、ミックス・オフィスで化学と生物学の融合領域研究を展開しています。「ミックス」をキーワードに、人々の思考、生活、行動を劇的に変えるトランスフォーマティブ分子の発見と開発を行い、社会が直面する環境問題、食料問題、医療技術の発展といったさまざまな課題に取り組んでいます。これまで10年間の取り組みが高く評価され、世界トップレベルの極めて高い研究水準と優れた研究環境にある研究拠点「WPIアカデミー」のメンバーに認定されました。

 

【研究代表者】

トランスフォーマティブ生命分子研究科 中村 匡良 特任准教授
http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/frommer-nakamura