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数物系科学

2024.05.27

マイクロクエーサーSS433に付随する分子雲から近紫外線放射を発見 ~分子雲温暖化の原因を特定~

名古屋大学大学院理学研究科の山本 宏昭 助教、竹内 努 准教授、石川 竜巳 博士前期課程学生の研究グループは、地球から約1.8万光年離れたマイクロクエーサー SS433の相対論的ジェットに付随する分子雲から、近紫外線が放射されていることを発見しました。
山本 助教らは、近紫外線のアーカイブデータとSS433に付随する分子雲の比較を行ったところ、SS433に一番近い場所にある分子雲で近紫外線が放射されていることを発見しました。近紫外線の放射領域は分子雲の広がりとほぼ一致しています。分子輝線、遠赤外線のデータとの比較から、近紫外線放射は分子雲の背後、SS433のジェットと分子雲の相互作用面から放射されていることを明らかにしました。この紫外線放射が分子雲や分子雲中の星間ダストを暖め、暖められた星間ダストが遠赤外線で再放射していることを突き止めました。この結果は宇宙線の粒子加速や空間的に構造を分解できないクエーサーの物理現象の理解に役立つと考えられます。
本研究成果は、2024年4月8日付日本天文学会欧文研究報告『Publications of the Astronomical Society of Japan』に掲載されました。

 

【ポイント】

・大質量星や超新星残骸などの高エネルギー現象で放射される近紫外線放射が、マイクロクエーサー注1)SS433の相対論的ジェットと相互作用している分子雲注2)で検出された。
・分子輝線の放射強度と近紫外線の放射強度との比較から、近紫外線放射は分子雲の背後から放射されていることを発見。
・SS433の相対論的ジェットと分子雲が直接相互作用していることを明らかにした。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)マイクロクエーサー: 
ブラックホールと星の近接連星系の内、ジェットを放出している天体のこと。伴星の巨星化などにより、主星の重力圏に伴星のガスが入り込むと、伴星のガスが主星に取り込まれる。こうして、主星に降り注いだガスは、主星の周りにガスディスクを形成し、そこからジェットを放出する。クエーサーのミニチュア版ということから、マイクロクエーサーと名付けられている。
注2)分子雲: 
銀河系の主要構成要素の1つ。他には星間ダストと星がある。分子雲の主要構成要素は水素分子だが、電気双極子モーメントを持たない水素分子は低温下では放射を出さない。分子雲中で水素分子の次に存在量が多く、かつ化学的に安定である一酸化炭素分子が出す放射を観測することで、分子雲の物理量、性質や運動を調べることができる。一酸化炭素分子は12C16O(CO)が主として存在している。その同位体である13C16O(13CO)は一酸化炭素分子全体の1-5%程度で、COで観測される領域よりも密度の高い領域を観測することができる。

 

【論文情報】

雑誌名:Publications of the Astronomical Society of Japan
論文タイトル:Near-ultraviolet radiation toward molecular cloud N4 in W50/SS433: Evidence of direct interaction of the jet with molecular cloud
著者:Yamamoto, H., Ishikawa, T., Takeuchi, T. T., (全員名古屋大学理学研究科所属)
DOI: 10.1093/pasj/psae007
URL: https://academic.oup.com/pasj/article/76/2/L1/7608737

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 山本 宏昭 助教
http://www.a.phys.nagoya-u.ac.jp