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複合領域

2024.06.21

全タンパク質構造への薬の結合親和性から薬効と副作用を予測 ~シミュレーションとAI・機械学習で薬のメカニズムを理解する~

名古屋大学大学院情報学研究科の坂尻 由子 研究員、山西 芳裕 教授、岡山大学学術研究院医歯薬学域の澤田 隆介 助教、九州工業大学院情報工学研究院の柴田 友和 研究員の研究グループは、AlphaFold注3)に代表されるAI技術で得られた全てのヒトタンパク質の立体構造をドッキングシミュレーションと機械学習モデルで解析し、薬の効能や毒性・副作用を予測する新しい計算手法を開発しました。約8千種類の既存薬と約2万種類のヒトタンパク質の結合親和性のシミュレーションから、様々な疾患に対する既存薬の新規効能を網羅的に予測できることを示しました。さらに、数百種類の毒性に対する薬の副作用を機械学習モデルで予測し、副作用の発現に関与するタンパク質を抽出することにも成功しました。本研究の提案手法は、薬のメカニズムの理解や医薬品開発の期間短縮や費用削減に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2024年6月21日午前9時(日本時間)付Cell Press社「iScience」で公開されます。

 

【ポイント】

・ヒトの全てのタンパク質の立体構造を、ドッキングシミュレーション注1)と機械学習注2)で解析し、薬の効能や毒性・副作用を予測する新しい計算手法を開発した。
・全タンパク質に対する薬の結合親和性を計算することで、薬の結合パターンを明らかにし、薬の副作用の発現に関与するタンパク質の抽出を可能にした。
・従来は考慮できなかったタンパク質群の影響を提案手法は考慮できるため、薬のメカニズムの理解や医薬品開発の期間短縮や費用削減に貢献することが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)ドッキングシミュレーション:
タンパク質と薬のドッキングシミュレーションは、結合様式と結合親和性を予測する情報技術である。
注2)機械学習:
データからパターンを学習し、新しい予測や分類を自動化する情報技術である。AIを支える技術として活用されている。
注3)AlphaFold:
DeepMind社(現在のGoogle DeepMind社)が開発したAIモデルで、タンパク質のアミノ酸配列からタンパク質の立体構造を高い精度で予測することができる。

 

【論文情報】

雑誌名:「iScience」
論文タイトル:?Predicting therapeutic and side effects from drug binding affinities to human proteome structures
著者:Sawada, R.(岡山大学), Sakajiri, Y. (名古屋大学), Shibata, T.(九州工業大学), and Yamanishi, Y.(名古屋大学)
DOI:10.1016/j.isci.2024.110032
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589004224012574

 

【研究代表者】

大学院情報学研究科 山西 芳裕 教授
https://yamanishi.cs.i.nagoya-u.ac.jp/index_J.html