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総合理工

2024.06.24

新しい反強誘電体を発見 局所構造制御による飛躍的な特性向上を実現 ~高性能コンデンサの開発に新展開~

名古屋大学大学院理学研究科の谷口 博基 准教授らの研究グループは、慶應義塾大学理工学部の萩原 学 専任講師、熊本大学半導体・デジタル研究教育機構の佐藤 幸生 教授、東京工業大学物質理工学院の横田 紘子 教授との共同研究で、チタン石型酸化物における新しい反強誘電体と、ドメイン壁に起因する新奇な誘電率増強効果を発見しました。
反強誘電性とよばれる性質をもつ物質(反強誘電体)中では、隣り合う電気双極子が互いに反平行に並んでおり、電場を加えることでそれらの電気双極子が平行に再配列します。この現象を利用することで、高密度蓄エネルギー特性や高電場印加下での高誘電率などの優れた特性を備えた誘電体材料の創製が可能となります。
これまでにチタン石型酸化物が反強誘電性をもつ可能性が提案されていましたが、未だ実証に至っていませんでした。それに対して本研究では、チタン石型酸化物の一種であるCaTiSiO5の反強誘電性を実験的に観測することに初めて成功しました。さらに、Siの一部をGeで置換することによって、本物質系の誘電率が著しく増大することを見出しました。また、この誘電率増大効果が、ドメイン壁と呼ばれる局所構造近傍に生じる極性領域に起因することを明らかにしました。この結果は、反強誘電体は極性をもたないという従来の常識を覆すものです。
本研究の成果によって誘電体の基礎的な理解が進むとともに、コンデンサの高性能化に向けた新たな誘電体材料の開発が大きく加速することが期待されます。
本研究成果は、2024年5月21日付 米国科学誌「ACS Nano」にオンライン掲載されました。

 

【ポイント】

・チタン石型酸化物において新しい反強誘電体を発見
・反強誘電体のドメイン壁近傍に生じる極性領域が誘電率を著しく増強
・高性能コンデンサ開発に向けた高誘電率材料設計の新たな指導原理となる可能性

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名: ACS Nano
論文タイトル : Unconventional Polarization Response in Titanite-Type Oxides due to Hashed Antiferroelectric Domains
著者 : Hiroki Taniguchi, Takumi Watanabe, Taro Kuwano, Akitoshi Nakano, Yukio Sato, Manabu Hagiwara, Hiroko Yokota, and Kazuhiko Deguchi ※太文字は本学関係教員等
DOI : 10.1021/acsnano.4c02168 
URL : https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.4c02168

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 谷口 博基 准教授
https://www.ylab2021.com/