京都大学化学研究所の菅大介 准教授、Yufan Shen 博士課程学生、治田充貴 准教授、島川祐一 教授の研究グループは、ファインセラミックスセンターの大江耕介 客員研究員、小林俊介 主任研究員、名古屋大学大学院工学研究科のXueyou Yuan特任助教、山田智明 教授と共同で、二酸化ハフニウムジルコニウム(Hf0.5Zr0.5O2, HZO)から、わずか結晶格子2個分に相当する厚さ1ナノメートルの二次元強誘電体を作製することに成功しました。
炭素原子1層からなるグラフェンの発見以来、原子層厚さを持つ二次元物質が新しいナノ材料として注目を集めており、その材料開発や電子機能探求が盛んにおこなわれています。しかしながら、現在広く機能材料として使われている酸化物など、共有結合やイオン結合によって構成原子が三次元的に“強く”結合した物質(三次元物質)からは、二次元物質を作製することは難しいと考えられてきました。
研究グループでは、エピタキシャル薄膜成長技術によって、犠牲層となる酸化物層と、1ナノメートルの厚さの二酸化ハフニウムジルコニウムを積層させた試料を作製しました。その後、犠牲層を選択的に除去(エッチング)することで、厚さを維持したまま二酸化ハフニウムジルコニウムのメンブレン結晶が得られることを見出しました。また作製したメンブレン結晶は、その特性評価から、室温において面直方向に13μC/cm2の自発分極を持つことがわかりました。これらの結果は、三次元物質である二酸化ハフニウムジルコニウムから二次元強誘電体が作製できることを実証するものです。開発した二次元強誘電体は、磁性体や超伝導体など様々な機能性物質上へ転写可能です。本研究成果は、強誘電体と機能性材料とを融合させた強誘電デバイスの開発の新しいルートを拓くものです。
本成果は、国際学術誌Nature Communicationsに6月25日午前10:00時(ロンドン時間)にオンライン掲載されます。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
タイトル:Ferroelectric freestanding hafnia membranes with metastable rhombohedral structure down to 1-nm-thick(1nm厚さでも準安定な菱面体晶構造を持つ強誘電ハフニアメンブレン結晶)
著 者:Yufan Shen, Kousuke Ooe, Xueyou Yuan, Tomoaki Yamada, Shunsuke Kobayashi, Mitsutaka Haruta, Daisuke Kan, Yuichi Shimakawa
掲 載 誌:Nature Communications DOI:10.1038/s41467-024-49055-w