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工学

2024.12.20

マイクロ流路内における高分子の切断現象を定量化 ~高分子溶液の射出制御、流路内攪拌に貢献~

名古屋大学大学院工学研究科の日出間 るり 教授の研究グループは、神戸大学、フランスのESPCI Parisとの共同研究で、低濃度高分子溶液中の高分子が流動中に切断される様子を、実験と数値計算により初めて定量化しました。
分子量の大きな高分子が流動中に切断されるという現象は、これまでにも報告されていたことでした。しかし、どのような流動条件で、どの程度切断するのかについての定量的な報告はありませんでした。
本研究は、流路幅が縮小と拡大を繰り返すマイクロ流路内(連続型急縮小急拡大マイクロ流路)に高分子溶液を流した際、流路内で高分子が切断されていく様子を、実験と数値計算により高分子の分子量変化を定量化することで明らかにしました。流路幅が縮小と拡大を繰り返す流路では局所的に速度が変化し、これにより流体に伸長応力が加えられるため、流体内の高分子が引き伸ばされて切断されます。
この現象は、高分子溶液のノズルからの射出に関連した、塗装、成形加工、紡糸プロセスの制御と高精度化、マイクロリアクターの攪拌促進と制御に直結するとともに、EOR(原油の三次回収)注1)など地下資源採掘の効率的な流体置換にも貢献が期待されます。
本研究成果は、2024年12月19日23時(日本時間)に国際学術誌『Physics of Fluids』に掲載されます。

 

【ポイント】

・高分子溶液中の高分子が流動中に切断する現象が報告されていたが、どのような状況で切断が生じるのかは明らかになっていなかった。
・流路幅が縮小と拡大を繰り返すマイクロ流路中を流れる高分子溶液内で、分子量の大きな高分子が徐々に切断されていく様子を明らかにした。
・切断現象は、流路幅が変化するノズルから射出される高分子溶液の挙動や、高分子が添加されたマイクロリアクター内の撹拌挙動に影響を与える。
・塗装、成形加工、紡糸、マイクロリアクター内での化学反応など、高分子を含む溶液を用いたプロセスの制御と高精度化、高効率化への貢献が期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)EOR(原油の三次回収):
熱や薬剤を加えた流体を地下に圧入し、地下資源の回収効率を向上させる方法。

 

【論文情報】

雑誌名:Physics of Fluids
論文タイトル:Polymer scission and molecular weight prediction in continuous abrupt contraction–expansion microchannel
著者:Guangzhou Yin (尹廣洲)1, Yuta Nakamura (中村優太) 1, Hiroshi Suzuki (鈴木洋) 1, Fran?ois Lequeux2, Ruri Hidema (日出間るり)3* (*責任著者)
1. 神戸大学, 2. ESPCI Paris, 3. 名古屋大学
DOI: doi.org/10.1063/5.0242781

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 日出間 るり 教授
https://hidema.mae.nagoya-u.ac.jp/complexfluids/