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複合領域

2025.01.17

複数の治療標的に作用する化合物を設計できる創薬AIを開発 ~AIで設計した化合物を合成し、所望の活性同定に成功〜

名古屋大学物質科学国際研究センターの天池 一真 助教(現 理化学研究所開拓研究本部・研究員)の研究グループ、名古屋大学大学院情報学研究科の山西 芳裕 教授は、複数の治療標的タンパク質に同時に作用する新薬候補化合物を生成する創薬AIを開発しました。実際に開発AIを用いて、気管支喘息の2つの治療標的タンパク質に作用する新規化合物の化学構造を設計しました。AI設計した化学構造をベースに10 種類の化合物を合成し、治療標的タンパク質を含む39 種類のタンパク質とのin vitro 結合試験を行い、その相互作用を評価しました。合成した化合物のうち3種類の化合物が、目的の2つの治療標的タンパク質と高い特異性で相互作用することを確認でき、所望の活性を有する化合物の生成に成功しました。本研究の提案手法は、治療効果の向上、副作用の軽減、患者負担の削減につながるポリファーマコロジー創薬の推進に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2025年1月17日午前9時(日本時間)付Cell Press社「iScience」で公開されます。

 

【ポイント】

・複数の治療標的タンパク質注1)に同時に作用する新薬候補化合物(ポリファーマコロジー化合物注2))の化学構造を設計する創薬AIを開発した。
・気管支喘息の2つの治療標的タンパク質に作用する化合物をAI設計し、その化合物を合成して、in vitro 結合試験注3)で所望の活性を同定できた。
・提案手法は、治療効果の向上、副作用の軽減、患者負担の削減につながるポリファーマコロジー創薬の推進に貢献することが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)治療標的タンパク質:
低分子化合物あるいはタンパク質製剤などによって、阻害または活性化されることで疾患の治療効果に繋がるようなタンパク質。
注2)ポリファーマコロジー、ポリファーマコロジー化合物:
薬の標的分子として単一のタンパク質だけでなく複数のタンパク質への作用を考慮する概念。ポリファーマコロジー化合物とは、その考え方に沿う化合物のことを指す。
注3)in vitro 結合試験:
試験管や培養器などの中で、ヒトや動物など生物体から抽出した組織を用いて、生体の体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の作用を調べる試験。

 

【論文情報】

雑誌名:「iScience」
論文タイトル:De novo generation of dual-target compounds using artificial intelligence
著者:Yasuda, K. (九州工業大学), Berenger, F.(東京大学), Amaike, K. (名古屋大学), Ueda, A. (名古屋大学), Nakagomi, T. (名古屋大学), Hamasaki G. (九州工業大学), Li, C. (名古屋大学), Otani, N. Y. (名古屋大学), Kaitoh, K. (名古屋大学), Tsuda, K. (東京大学), Itami, K. (名古屋大学), and Yamanishi, Y.(名古屋大学)
DOI:10.1016/j.isci.2024.111526
URL:https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(24)02753-6

 

【研究代表者】

大学院情報学研究科 山西 芳裕 教授
https://yamanishi.cs.i.nagoya-u.ac.jp/index_J.html