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環境学

2025.01.28

海洋内部の「遅い波動」が紡ぐエルニーニョの謎 ~エネルギー輸送の視点で読み解く気候変動メカニズム~

名古屋大学宇宙地球環境研究所の相木 秀則 教授らの研究グループは、海洋研究開発機構と気象研究所との共同研究で、エルニーニョ現象やラニーニャ現象のメカニズムにおいて重要な役割を果たす海洋内部の「遅い波動」に注目し、そのエネルギー伝達の全体像を示すことに成功しました
本研究では、独自の診断手法を用いて、これまで海面水温の偏差を用いて説明されてきたエルニーニョ現象・ラニーニャ現象の仕組みを、海洋内部の遅い波動によるエネルギー輸送という新たな視点で捉えました。
赤道上の風による波動生成の強さや波動の回り込みの強さを、それぞれ海面水温から見積もる経験式を構築しました。また、強いエルニーニョ現象の際には、海洋内部の遅い波動が担うエネルギー輸送の強さが8ギガワット程度になることも分かりました。
これらの進展により、エルニーニョ現象やラニーニャ現象のメカニズムをより精緻に理解し、気候予測の精度向上や、今後の気候変動に対する適応策の策定に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2025年1月13日(日本時間)付の国際誌『Climate Dynamics』に掲載されました。

 

【ポイント】

・これまで海面水温の偏差を用いて説明されてきたエルニーニョ現象注1)・ラニーニャ現象注2)の仕組みを、海洋内部の遅い波動によるエネルギーの輸送量という新たな視点で理解できるようにした。
・赤道上の風による波動生成の強さや波動の回り込みの強さをそれぞれ海面水温から見積もる経験式を構築した。
・強いエルニーニョ現象の際には海洋内部の遅い波動が担うエネルギー輸送の強さが8ギガワット程度になることが分かった。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)エルニーニョ現象:
熱帯太平洋の東部で海面水温が高くなる現象。
注2)ラニーニャ現象:
熱帯太平洋の東部で海面水温が低くなる現象。

 

【論文情報】

雑誌名:Climate Dynamics
論文タイトル:Energy circulation associated with interannual waves in the tropical-subtropical Pacific
著者:WU Borui(名古屋大学大学院環境学研究科)、相木秀則(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、豊田隆寛(気象研究所)、名倉元樹・尾形友道(海洋研究開発機構)
DOI:10.1007/s00382-024-07530-6 
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00382-024-07530-6                

 

【研究代表者】

宇宙地球環境研究所 相木 秀則 教授、主著者名:呉 博睿(WU Borui)
https://marine.isee.nagoya-u.ac.jp/