工学
2025.03.24
半導体の製造プロセスを"一気通貫"で最適化! AI活用により企業の壁を越えスピーディな性能改善に貢献
名古屋大学未来材料・システム研究所の宇治原 徹 教授、理化学研究所革新知能統合研究センターの沓掛 健太朗 客員研究員(現 名古屋大学未来材料・システム研究所 准教授)、グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社の永井 勇太 参事、アイクリスタル株式会社の髙石 将輝 代表取締役、関 翔太 取締役技術統括、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社の谷川 公一主幹技師 らの研究グループは、仮想空間上に構築したデジタルツインを接続して高速に最適化するプラットフォーム(メタファクトリー)を用いて、Siウェーハ製造からCIS製造までの一貫したプロセス全体最適化を行いました。
先端半導体デバイス開発では、短期間での性能向上が求められますが、従来型の個々の工程の最適化では限界があります。特に近年、Siウェーハ内部の不純物濃度分布や欠陥密度分布をデバイス構造に合わせて適切に作り込む必要が判明し、プロセス全体での最適化が重要となっています。しかし、企業の壁を越えて、ウェーハ製造とデバイス製造とが一体となって機密性の高い情報を共有した上で、膨大なプロセスパラメータの最適化を短時間で行うことは困難でした。
本研究では、Siウェーハ製造プロセスからCIS製造プロセスまでのデジタルツインを仮想空間上に構築して最適化することで、企業の壁を越えた最適化を実現しました。さらに従来のシミュレーションを用いた最適化と比較して、要する時間を約1/1000に短縮しました。本成果は、企業横断での最適化の必要性を実証するものであり、またCISのみならずさまざまな半導体材料・デバイスに共通して展開可能な方法です。
本研究成果は、2025年3月17日に第72回応用物理学会春季学術講演会にて発表されました。
・Siウェーハ製造からCIS注1)製造までの一貫したプロセス全体最適化を行った。
・各製造プロセスのデジタルツイン注2)を接続して、仮想空間上で高速に最適化。
・企業横断のためのプラットフォーム(メタファクトリー)を構築した。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
注1)CIS:
CMOSイメージセンサーを指し、カメラの撮像素子のこと。スマートフォン、デジタルカメラ、監視カメラ、産業用センサーなど、多様な用途で用いられている。
注2)デジタルツイン:
コンピュータ内に構築された実際の工程のモデル。
第72回応用物理学会春季学術講演会
17a-K505-1
カスケード工程におけるSiウェーハ内部の酸素析出物分布のデータ同化
〇楠木 琢也1、阿部 諄汰1、永井 勇太1、須藤 治生1、岩城 浩也1、高須 理栄1、番場 博則1、泉妻 宏治1、前田 進2、関 翔太2 (1.グローバルウェーハズ・ジャパン、2.アイクリスタル)
17a-K505-2
半導体製造における企業間を跨いだデジタルツインによるウェーハ・デバイスプロセスの全体最適化
〇関 翔太1,4、中西 佑児1、松岡 毅1、前田 進1、髙石 将輝1、楠木 琢也2、永井 勇太2、永倉 大樹3、谷川 公一3、沓掛 健太朗4、宇治原 徹1,4 (1.アイクリスタル、2.グローバルウェーハズ・ジャパン、3.ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング、4.名大)
17a-K505-3
半導体熱処理条件の最適化における既存条件を考慮した目的関数の検討
笠原 亮太郎1、〇沓掛 健太朗1,2、原田 俊太1、宇治原 徹1、関 翔太3、高石 将暉3、永井 勇太4 (1.名大、2.理研、3.アイクリスタル、4.グローバルウェーハズ・ジャパン)