名古屋大学大学院情報学研究科の難波 里子 研究員、山西 芳裕 教授の研究グループは、ゲノムワイド関連解析(GWAS)とトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)の融合により、任意の疾患の病態メカニズムを反映した疾患遺伝子発現プロファイル(TRESOR)を構築しました。TRESORを用いて疾患状態を打ち消すタンパク質を探索するAIを開発し、希少疾患を含むさまざまな疾患に対する創薬標的分子の予測を可能にしました。284疾患のゲノム情報とトランスクリプトーム情報の横断解析により、治療効果につながる阻害標的分子と活性化標的分子を見出しました。希少疾患に対して新規に予測された創薬標的分子について、大規模な疾患コホートデータを用いて有効性を確認しました。本研究の開発AIにより、これまで治療法がなかった希少疾患や難治性疾患に対する新たな治療法の提案や医薬品開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2025年4月18日18時(日本時間)付Nature Research社『Nature Communications』に掲載されます。
・ゲノムワイド関連解析(GWAS)注1)とトランスクリプトームワイド関連解析(TWAS)注2)の融合により、任意の疾患の病態メカニズムの特徴抽出を行った。
・疾患状態を打ち消すタンパク質を探索できるAI・機械学習注3)の開発により、さまざまな疾患に対する創薬標的分子注4)の網羅的な予測を可能にした。
・これまで治療法がなかった希少疾患や難治性疾患に対し、新たな治療法の提案や医薬品開発が期待できる。
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注1) ゲノムワイド関連解析(GWAS):
GWASは疾患と関連する遺伝的特徴(感受性遺伝子や一塩基多型など)を網羅的に推定する解析手法。
注2) トランスクリプトームワイド関連解析(TWAS):
TWASは疾患と関連する遺伝的特徴に影響を受けた遺伝子発現パターンを網羅的に推定する解析手法。
注3) 機械学習:
データからパターンを学習し、新しい予測や分類を自動化する情報技術である。AIを支える技術として活用されている。
注4) 創薬標的分子:
薬剤などで制御(阻害や活性化)することにより疾患の治療につながる生体分子。
雑誌名:「Nature Communications」
論文タイトル:Therapeutic target prediction for orphan diseases integrating genome-wide and transcriptome-wide association studies
著者:Namba, S.(名古屋大学), Iwata, M.(九州工業大学), Nureki, S.(大分大学), Yuyama Otani, N.(名古屋大学), and Yamanishi, Y.(名古屋大学)
DOI: 10.1038/s41467-025-58464-4
大学院情報学研究科 山西 芳裕 教授
https://yamanishi.cs.i.nagoya-u.ac.jp/index_J.html