社会科学
2025.11.13
ESGに積極的な企業は新開示規制に積極対応 その対応は株価など経済的にもプラスの効果
・本研究では、環境・社会・ガバナンス(ESG注1))に積極的に取り組む企業が、新しい開示規制に直面するときに、どのように行動(たとえば、早めに自主的に規制を適用するか否か)するか、どのような経済的な結果(企業にとっての株価やパフォーマンス)につながるかについて独自のデータを用いて分析し、実証結果を提示した。
・分析の結果、ESGに積極的な企業(ESGランキングが高い企業)は、より早めに規制を適用し、開示の内容やコストがより多いが、それが企業の株価やパフォーマンスへと寄与されたことが示された。
・ESGと企業情報の開示規制を直接リンクさせる先行研究が少ない中、本研究は、ESGが企業行動(企業が規制に対する反応)に影響を与える洞察を提供している。なお、本研究で例として取り上げた「監査上の主要な検討事項」の開示に関わる規制そのものが監査領域で広く議論されている重要な開示政策であり、当該規制の変化に関わる研究が活発に行われている。
名古屋大学大学院経済学研究科の仙場 胡丹(せんば ふだん)准教授、Maretno Agus Harjoto(名古屋大学大学院経済学研究科附属国際経済政策研究センターVisiting Professor・米Pepperdine University教授)の研究グループは、環境・社会・ガバナンス(ESG)に積極的に取り組む企業が、新しい開示規制に直面するときに、どのように行動(たとえば、早めに自主的に規制を適用するか否か)するか、どのような経済的な結果(企業にとっての株価やパフォーマンス)につながるかについて独自のデータを用いて分析し、実証結果を提示しました。分析の結果、ESGに積極的な企業(ESGランキングが高い企業)ほど、開示規制を自主的に(早期的に)適用する傾向があること、より多くの開示項目を開示する傾向があることが示されました。また、ESGに積極的な企業はコスト(監査報酬)が高いことが顕著であることが判明し、その後の株価やパフォーマンスも高い傾向にあることが明らかになりました。
本研究は、幅広い財務報告利用者に、企業のESG実践の積極度合いが企業行動(企業が規制に対する反応)に与える影響の予測について新しい知見を提供するものです。本研究結果は、学術的研究や政策的議論において、基礎的な実証結果を広く提供する役割を担うことが期待されます。
本研究成果は、2025年10月30日付Emerald 出版社の国際学術誌『Managerial Auditing Journal』に掲載されました。
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注1)ESG:
環境(Environment)・社会(Social) ・ガバナンス(企業統治)(Governance)の英語の頭文字をもって、環境・社会・ガバナンスに熱心に取り組むことを表す。
雑誌名:Managerial Auditing Journal
論文タイトル:Sustainability and Financial Disclosure: Role of ESG in Key Audit Matters Adoption
著者:Maretno Agus Harjoto (Pepperdine Graziadio Business School (PGBS), Pepperdine University; Economic Research Center (ERC), Nagoya University), Hu Dan Semba (Graduate School of Economics, Nagoya University)(Contact Author)
DOI:10.1108/MAJ-01-2025-4663
URL:https://doi.org/10.1108/MAJ-01-2025-4663
大学院経済学研究科 仙場 胡丹 准教授, 主著者:Maretno Agus Harjoto(マレットノ・アグス・ハルジョト)
https://mail.soec.nagoya-u.ac.jp/~kotan/index.html