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生物学

2026.01.08

栄養条件に応じ単細胞-多細胞をスイッチする遺伝子特定~多細胞生物の出現や進化の仕組み理解に寄与~

【ポイント】

・海洋由来の黒色酵母注1)株が栄養条件に応じて単細胞性増殖と多細胞体形成を切り換えることを発見した。
・単細胞性―多細胞性の切り換えに必要な10遺伝子を特定した。遺伝子を欠失させると、栄養状態に関わらず常に多細胞体として成長する株が生まれた。
・単細胞増殖している酵母に栄養を与えると、細胞内のMyb1タンパク質が急速に分解され、多細胞体の成長モードへと転換した。逆に、Myb1の発現は単細胞化を誘導した。Myb1が単細胞性―多細胞性変換の分子スイッチであることが示唆された。
・多細胞生物が生まれる仕組みを遺伝子・細胞レベルで研究できる新しいモデル系を確立した。

 

名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所(三重県鳥羽市菅島)の栗田 岳歩 博士後期課程学生と五島 剛太 所長を中心とするグループは、海洋由来酵母における単細胞性―多細胞性転換の細胞内分子基盤を解明しました。
生物進化の過程でいかにして単細胞生物から多細胞生物が生まれたのかはよく分かっていません。一部の生物は環境に応じて単細胞性―多細胞性を切り換える能力を持ちますが、その切り換えを可能にする細胞内基盤を明らかにできれば、多細胞生物誕生の仕組みが明らかになることが期待されていました。
本研究は、海洋由来酵母種が栄養に応じて単細胞性と多細胞性を切り換えることを発見し、遺伝子操作技術の確立を通じて切り換えに必要な遺伝子経路を解明した重要な成果です。地球の生命史の大きな転換点の一つとされる多細胞生物の進化の機構への理解が深まることが期待されます。
本研究成果は、2026年1月8日午前0時(日本時間)付科学雑誌「Nature」に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

 

【用語説明】

注1)黒色酵母:
    黒色のコロニーを形成する酵母の総称 (真菌類)

 

【論文情報】

雑誌名: Nature
論文タイトル:Genetic switch between unicellularity and multicellularity in marine yeasts
著者: Gakuho Kurita, Kyoka A. Adachi, Kazuma Uesaka, Gohta Goshima
DOI : 10.1038/s41586-025-09881-4
URL : https://www.nature.com/articles/s41586-025-09881-4

 

【研究代表者】

大学院理学研究科附属臨海実験所 五島 剛太 教授
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~goshimalab/