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生物学

2026.06.19

ジベレリン合成と細胞分裂が連動する茎伸長制御の新たな分子メカニズムを解明〜従来説を更新するモデル提案、作物収量向上への応用に期待〜

【ポイント】

・モデル植物のシロイヌナズナを用いて植物ホルモン「ジベレリン(GA)注1)」による茎伸長の制御機構を解明。
・茎伸長の開始時に先端部でGA合成遺伝子GA20ox1注2)の発現が上昇し、活性型ジベレリンGA4注3)が蓄積することを発見。
・これにより、茎内部の細胞分裂が活性化し、その後の表皮細胞の伸長を誘導する新たな仕組みを明らかにした。
・本成果は、作物の草丈制御や収量性向上への応用が期待される。

 

名古屋大学大学院生命農学研究科の水嶋 澪 博士後期課程学生、同大学生物機能開発利用研究センターの芦苅 基行 教授、高木 紘YLC特任助教(兼 高等研究院)らの研究グループは、同大学院生命農学研究科の榊原 均 教授、遺伝子実験施設の打田 直行 教授、トランスフォーマティブ生命分子研究所の佐藤 良勝 特任准教授、生物機能開発利用研究センターの永野 惇 教授らグループと共同で、植物の茎伸長を導くホルモン制御の仕組みを明らかにしました。
植物は生殖成長期になると花茎注4)を伸ばし、花や種子を高い位置に配置します。本研究では、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、花茎伸長の分子メカニズムを解析しました。その結果、従来考えられていたよりも茎上部の幅広い領域で伸長が活発であり、それには内部組織の細胞分裂が重要であることを見出しました。また、ジベレリン生合成変異体ではこの細胞分裂活性が低下し、茎伸長が強く抑制されることを確認しました。
さらに、茎伸長開始に伴い活性型ジベレリンGA4が茎上部に蓄積し、その合成に関わるGA20ox1の発現が上昇・維持されることを明らかにしました。これらの結果から、植物は茎伸長の開始に合わせてジベレリン合成を活性化し、内部組織の細胞分裂を促進することで茎伸長を制御していると考えられます。
本研究は、茎伸長の制御機構に関する従来の理解を更新するものであり、植物が成長のタイミングと場所をどのように調節しているかの理解を深める重要な知見です。また今後、作物の草丈や倒伏抵抗性、収量性の改善につながる新たな技術基盤としての応用が期待されます。
本研究成果は、2026年6月13日付で国際学術誌『Plant and Cell Physiology』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)ジベレリン(GA):
植物の成長を調節する植物ホルモンの一つ。茎や葉の伸長、種子の発芽、開花など、植物のさまざまな成長過程に関わる。GAはGibberellinの略称。
注2)GA20ox1:
GIBBERELLIN 20 OXIDASE 1の略称。活性型ジベレリンがつくられる過程で働く酵素の一つ。
注3)GA4:
Gibberellin A4の略称。活性型ジベレリン。
注4)花茎(かけい):
花をつけるために伸びる茎のこと。シロイヌナズナのようなロゼット型植物では、通常は地表近くに葉を広げて成長し、花を咲かせる時期になると花茎を伸ばす。

 

【論文情報】

雑誌名:Plant and Cell Physiology
論文タイトル:GA20ox1-mediated GA4 production promotes inflorescence stem growth in Arabidopsis via inner-layer cell proliferation
著者:*水嶋澪、*松本皐佑、小嶋美紀子、竹林裕美子、黒谷賢一、*水谷未耶、Xiaosa Xu、*佐藤良勝、深澤壽太郎、*打田直行、*永井啓祐、*永野惇、*榊原均、*芦苅基行、*高木紘(*本学関係者)
DOI:10.1093/pcp/pcag077                                 

URL:https://doi.org/10.1093/pcp/pcag077 

 

【研究代表者】

高等研究院/生物機能開発利用研究センター 高木 紘 YLC特任助教 
http://motoashikari-lab.com