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医歯薬学

2026.07.30

訪問看護の患者安全を支えるニアミスへの気づきを可視化 利用者との協働・包括的観察など、危険を察知する4要因を明らかに

【ポイント】

・訪問看護師がニアミス注1)に気づく要因を可視化:
訪問看護師から得た237件の回答のうち、有効回答177件を分析し、訪問看護師が高齢者ケアにおけるニアミスに気づく要因を計量テキスト分析によって可視化した。
・高齢者ケアにおける訪問看護師のニアミスへの気づきは特に「服薬管理」で多く発生:
ニアミスへの気づきは、服薬管理(71件)、訪問予定(51件)、身体介助(25件)関連で多く報告された。
・利用者との協働、チームによる確認、包括的観察、違和感の察知がニアミスへの気づきを支える:
ニアミスへの気づきを支える要因として、①利用者との協働 ②チームによる確認③人と住環境の包括的観察 ④経験に基づく違和感の察知という四つを明らかにした。
・患者安全のために熟練者の看護技術を経験が浅い看護師へ伝達する必要性を示唆:
参加者の約6割は20年以上の看護経験を有しており、本研究は、熟練者の暗黙知を経験が浅い看護師でも利用可能な明示知へ変換する必要性を訴求している。

 

名古屋大学大学院医学系研究科の拝田 一真 助教は、静岡県立大学大学院看護学研究科の田中 貴大 院生、千葉大学大学院看護学研究院の石橋 みゆき 教授と共同研究を行い、訪問看護師を対象とした高齢者ケアにおけるニアミスへの気づきに関する質問紙調査を実施しました。237件の回答から有効回答177件を抽出し、計量テキスト分析によって可視化を試みました。本研究のニアミスへの気づきは、訪問看護師が誤った行動や安全でない状況、危険な住環境を事前に認識することを指しています。計量テキスト分析は、計量的手法によってテキストデータを整理・分析する手法です。
その結果、ニアミスへの気づきは、服薬管理(71件)、訪問予定(51件)、身体介助(25件)、医療機器(15件)、情報共有(5件)、住環境(4件)、看護記録(3件)、その他(3件)の順で報告されました。さらに、回答における語と語の結びつきを可視化したところ、①利用者との協働(利用者と一緒に処方薬を確認しながら内服の準備を行う) ②チームによる確認(朝礼などのミーティング時に訪問予定をチームで確認し合う) ③人と住環境の包括的観察(利用者の状態とその住環境を包括的に観察した上で身体介助を行う) ④経験に基づく違和感の察知(過去の経験を活かし利用者の言動に表れる違和感を捉える)というニアミスへの気づきを支える4要因が明らかになりました。
本研究成果は、2026年7月8日に国際学術雑誌『Journal of Patient Safety and Risk Management』にオンライン掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)ニアミス(near miss):
国際的な用語において、患者安全インシデント(patient safety incident)には、患者への到達の有無と危害の有無に基づき、ニアミス(near miss)、無害インシデント(no harm incident)、有害インシデント(harmful incident)が含まれる。ニアミスは、患者に危害を及ぼす可能性のあるインシデントが患者に到達しなかった事象を指す。これに対し、無害インシデントは、インシデントが患者に到達したものの、識別可能な危害が生じなかった事象を指し、有害インシデントは、インシデントによって患者に危害が生じた事象を指す。本研究では、このような国際的な定義を踏まえ、ニアミスへの気づきを「訪問看護師が誤った行動や安全でない状況、危険な住環境を事前に認識すること」と操作的に定めて探求した。

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of Patient Safety and Risk Management
論文タイトル:Factors related to near-miss recognition in home-visit nursing for older adults: A quantitative content analysis
著者:Kazuma Haida, Takahiro Tanaka, Miyuki Ishibashi
DOI: https://doi.org/10.1177/25160435261466018 
【著者最終稿(名古屋大学学術機関リポジトリ公開版)】
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/records/2015155
*論文の正式な出版版は上記DOIから、査読後の著者最終稿は名古屋大学学術機関リポジトリからご覧いただけます

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科 拝田 一真 助教
https://www.met.nagoya-u.ac.jp/index.html