・全固体電池への応用が期待される酸フッ化物注1)固体電解質注2) LLNOFのミリメートルサイズ単結晶を世界で初めて育成。
・25 ℃で最大16.3 mS cm–1のバルクリチウムイオン伝導率注3)を示し、酸化物・酸フッ化物固体電解質として世界最高値を達成。
・単結晶の結晶構造解析から、リチウムイオン移動と連動するフッ化物イオンの局所緩和注4)機構を示した。
名古屋大学大学院工学研究科の矢島 健 准教授、髙澤 千佳 博士前期課程学生、佐藤 大介 博士前期課程学生(研究当時)、入山 恭寿 教授らの研究グループは、パイロクロア型酸フッ化物Li2–xLa(1+x)/3Nb2O6F(LLNOF)のミリメートルサイズ単結晶を世界で初めて育成し、25 ℃で最大16.3 mS cm⁻¹のバルクLiイオン伝導率を示しました。これは酸化物・酸フッ化物固体電解質として報告されている最高値です。さらに、単結晶X線回折による結晶構造解析と最大エントロピー法(MEM)注5)による電子密度解析から、フッ化物イオンが空孔注6)方向へ局所的に変位することを明らかにし、Liイオン移動と連動する局所緩和を、高速イオン伝導を支える機構として示しました。
酸化物・酸フッ化物固体電解質は化学的・熱的安定性に優れる一方、高いLiイオン伝導率を実現することが課題とされてきました。本研究は、分極率の低いアニオンからなる固体でも、Liイオン移動に伴うアニオンの局所緩和によって低い移動障壁を実現できることを示すものであり、高い安定性と高いLiイオン伝導率を両立する固体電解質の探索につながる成果です。
本研究成果は、2026年8月21日付で『Journal of the American Chemical Society』オンライン版に掲載されました。
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注1)酸フッ化物:
酸化物イオンとフッ化物イオンの両方を含む化合物。LLNOFは酸化物イオンとフッ化物イオンが異なる結晶学的サイトを占有するアニオン骨格を持つ。
注2)固体電解質:
Liイオンなどのイオンが固体中を移動することができる物質。全固体電池では、従来のリチウムイオン電池で用いられる液体電解質に代わって使用される。
注3)バルクLiイオン伝導率:
結晶粒界や電極界面などの影響を除いた、結晶内部そのもののLiイオン伝導率。単結晶では結晶粒界が存在しないため、結晶内部の伝導特性を直接評価できる。
注4)局所緩和:
周囲の原子や空孔の配置の変化に応じて、原子が局所的な安定位置の間を移ること。本研究では、Liイオンの移動によって空孔の位置が入れ替わると、フッ化物イオンの安定位置も空孔方向へ切り替わる過程を指す。
注5)最大エントロピー法(MEM):
X線回折で得られた実験データから、結晶中の電子密度分布を可視化する解析法。本研究ではフッ化物イオン周辺の電子密度の広がりと局所的な変位を調べるために用いられた。
注6)空孔:
結晶中で原子が占有できる位置のうち、原子により占有されていない位置。LLNOFでは、フッ化物イオンの周囲にある四つの位置をLiとLaが占有し、その一部は組成に応じて空孔となる。そのため、フッ化物イオンの周囲には空孔が存在する。この空孔を利用してLiイオンが移動することでイオン伝導が生じる。
雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文タイトル:Migration-Coupled Local Fluoride Relaxation in Li2–xLa(1+x)/3Nb2O6F Single Crystals
著者:
矢島 健(名古屋大学大学院工学研究科・准教授)
髙澤 千佳(名古屋大学大学院工学研究科・博士前期課程)
佐藤 大介(研究当時、名古屋大学大学院工学研究科・博士前期課程)
入山 恭寿(名古屋大学大学院工学研究科・教授)
DOI: 10.1021/jacs.6c08912
URL: https://doi.org/10.1021/jacs.6c08912
大学院工学研究科 矢島 健 准教授
https://www.material.nagoya-u.ac.jp/LIB/index.html