・スペイン・カナリア諸島ラ・パルマ島のチェレンコフ望遠鏡アレイ天文台(CTAO)北半球サイトで、口径23メートルの大口径望遠鏡(LST)4基が完成しました。
・約20ギガ電子ボルト以上の宇宙ガンマ線を観測でき、CTAO の望遠鏡の中で最も低いエネルギー領域の観測を担います。
・暗黒物質の正体、宇宙線(宇宙を飛び交う高エネルギー粒子)の発生源と、極めて高いエネルギーまで加速される仕組みなど、天体物理学、素粒子物理学、宇宙論の根本的な問いに取り組みます。
2026年10月15日、スペイン・カナリア諸島ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にあるチェレンコフ望遠鏡アレイ天文台(CTAO)北半球サイトで、世界各地の主要研究機関から集まった科学者や関係者250人が、大口径望遠鏡(LST)アレイの完成を祝う記念式典に参加しました。4基の望遠鏡の完成は、世界の天体物理学研究にとって重要な節目であり、CTAOの本格的な科学観測に向けた大きな一歩です。
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・名古屋大学宇宙地球環境研究所 田島 宏康:
「名古屋大学宇宙地球環境研究所は、CTAOの開発・建設において、主に小口径望遠鏡(SST)の開発で貢献してきました。大口径望遠鏡(LST)については、昨年度まで本研究所に在籍していた教員が、カメラおよび光学系の開発・設置・運用に携わりました。 観測面では、LSTの運用と観測データの解析に参加しており、大学院生が宇宙線電子のエネルギースペクトルの測定や暗黒物質の探索に取り組んでいます。
LSTアレイ4基による本格的なステレオ観測の開始により、これらの研究が大きく進展することを期待しています。」
・LST国際共同研究チームの代表/CTAOコンソーシアムのスポークスパーソンを務める 手嶋 政廣:
「LSTアレイの完成は、15年以上にわたる国際協力と技術革新の結実です。これらの望遠鏡によって、超大質量ブラックホールや中性子星、宇宙線の起源、宇宙の暗黒物質の正体など、宇宙の極限的な環境や現象を探ることができます。」
・CTAO日本グループの代表を務める窪 秀利:
「日本グループは、反射鏡や焦点面カメラの開発・製作を担い、LSTアレイの完成に大きく貢献してきました。今後は、4基による高い観測感度と高速駆動性能を生かし、遠方宇宙や突発天体などから届くガンマ線を捉え、宇宙の根源的な謎の解明と新たな現象の発見を目指します。」
・LST国際共同研究グループについて
大口径望遠鏡(LST)の国際共同研究グループは、チェレンコフ望遠鏡アレイ天文台(CTAO)に設置するLSTの設計、建設、性能検証・調整に取り組む科学者、技術者、研究機関からなる国際組織です。地上のガンマ線望遠鏡として、これまでで最も低いエネルギーから観測できるようにするために、光学系、光検出器、機械系、高速電子回路の先進技術を開発してきました。
この計画は、イタリア、クロアチア、スイス、スペイン、チェコ、ドイツ、日本、ブラジル、フランス、ブルガリア、ポーランドの研究機関による緊密な国際協力によって実現しました。
・CTAOについて
CTAO(チェレンコフ望遠鏡アレイ天文台、www.ctao.org)は、世界最大かつ最高性能の地上ガンマ線天文台となります。これまでにない高い精度と、約20ギガ電子ボルトから300 テラ電子ボルトにわたる広いエネルギー範囲により、天体物理学の最も難しい謎の解明に貢献します。その謎に迫る研究は、大きく3つのテーマに分けられます。宇宙空間を光速近くの速さで飛び交う粒子「宇宙線」の起源と役割を解明すること、ブラックホールや中性子星などの極限環境を探ること、そして暗黒物質やアインシュタインの相対性理論からのずれを探索し物理学のフロンティアを開拓することです。
広いエネルギー範囲を観測するために、CTAOは大口径望遠鏡(LST)、中口径望遠鏡(MST)、小口径望遠鏡(SST)の3種類の望遠鏡を用います。60基を超える望遠鏡が、北半球のスペイン・ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にあるCTAO北サイトと、南半球のチリ・アタカマ砂漠のパラナル天文台にあるCTAO南サイトの、2つの観測拠点に配置されます。
CTAOは、ビッグデータを扱うプロジェクトです。年間に生成されるデータは数百ペタバイト(PB)に達し、圧縮後でも約12 PBになります。CTAOは、研究成果を広く共有する「オープンサイエンス」の方針に基づき、観測提案を公募して観測を行い、科学解析に利用しやすい形に処理されたデータやソフトウェアを一般公開します。このような形で運用される地上ガンマ線観測施設は、CTAOが初めてです。
CTAOの中央組織(法人名称はCTAO ERIC)は、天文台の建設と運用、および4つの拠点の管理を担います。CTAO ERICのメンバーは、イタリア、オーストリア、欧州南天天文台(ESO)、クロアチア、スイス、スペイン、スロベニア、チェコ、ドイツ、フランス、ポーランドです。オランダがオブザーバーとして参加しています。さらに、貢献国であるオーストラリア、日本、ブラジル、米国、南アフリカは、戦略的パートナーまたは第三者としてCTAO ERICに参加するための手続きを進めています。
CTAO ERICは、世界各地のパートナーと緊密に協力しています。パートナーには、天文台に不可欠なハードウェアやソフトウェアを現物貢献(In-Kind Contribution)として開発する共同研究チームや、天文台を活用した科学研究に取り組む研究者の国際組織であるCTAOコンソーシアムが含まれます。
〇関連情報:
プレスリリース「チェレンコフ・テレスコープ・アレイ(CTA)大口径望遠鏡1号基 完成記念式典を開催後、試験運転を開始」(2018/10/11)
https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/742/
宇宙地球環境研究所・宇宙線研究部 田島 宏康 教授
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/CR/
プロジェクトに関するページ:
https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/CR/research/gamma/