文科系リレー学術講演会「文 の世界 ―書簡・通信・コミュニケーション―」
時間 | 13:00~16:15 |
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場所 | シンポジオンMAP |
対象 | 一般市民 |
内容 | 第1部 海をわたる
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※辰巳 琢郎氏の「琢」の字は本来「」ですが、ホームページ表記の制約から「琢」としております。
プログラム詳細
第1部 海をわたる文
- 「現代台湾映画におけるラブレター」
講師:星野 幸代(国際言語文化研究科准教授) [プロフィール]
"ラブレターの読者はすべて覗き屋である。"台湾映画『海角七号』(2008)はラブレターの朗読で始まる。「1945年12月25日。友子、太陽がすっかり海に沈んだ。これで、本当に台湾島がみえなくなってしまった。君はまだあそこに立っているのかい?」ラブレターに記録された"不在"は、果たして解決されるのか?60年後、ラブレターを発見した一組の男女の恋の行方は?冒頭から「覗き屋」に設定することによって、『海角七号』は観る者を引き込む。また世紀を超えたラブレターの"永遠"性を通して、台湾-日本相互のノスタルジアを成熟した視点から描いていく。 - 「漂着船にみる19世紀日朝の文化交流」
講師:池内 敏(文学研究科教授) [プロフィール]
1819年、朝鮮半島西海岸に薩摩船が漂着します。乗員のひとり安田喜藤太は、漂着地での一ヶ月間を朝鮮人たちと筆談しながら過ごします。相互理解の進んだ場合もあれば誤解のまま終わったものもあります。また、帰国に際して安田が贈った別れの和歌に対し、朝鮮人官僚は深い感銘を受けています。同じ漢字文化圏から派生しながら異なる文化を背負った人たちの、19世紀における文化交流について話題提供できればと思います。 - 辰巳 琢郎氏を交えたトークセッション
第2部 時をわたる文
- 「パロディに潜む教訓 ―『果蔬涅槃図』(若冲作)を絵解く―」
講師:伊藤 信博(国際言語文化研究科助教) [プロフィール]
近年評価が高まっている江戸時代の画家伊藤若冲作「果蔬涅槃図」は、代表的仏画である涅槃図のいわばパロディと見なされる水墨の掛幅(縦181.7×横96.1cm)である。若冲は京都の錦市場にあった青物問屋「枡屋」の四代目枡屋源左衛門で、四十歳で家督を譲り、以後画業に専念したとされる。また、晩年は黄檗僧として過ごしたことからも、この画が仏法に根差した思想である「草木国土悉皆成仏」により描かれたとも言われている。そこで、描かれた全野菜を特定する考証を通して、この特異な作品に潜む製作者の意図やそのメッセージを考察することで、江戸文化の特徴の一つを明らかにしたい。 - 「女性が学ぶということ ―『からすまる帖』にみる〈知〉の継承―」
講師:榊原 千鶴(文学研究科助教) [プロフィール]
『からすまる帖』とは、室町末期成立かとされるいわゆる『仮名教訓』系の女訓書である。婚家での心得や処世訓を箇条書きにしたその内容は、小異はあるものの、嫁ぎ行く女性への手紙という形によって、近世、さらには近代へと受け継がれてきた。本発表では、『からすまる帖』が果たした「女訓と習字手本を兼ねた教科書」(石川松太郎)としての役割に注目することで、近代日本における女性教育のあり方を、〈知〉の継承という観点から考える - 辰巳 琢郎氏を交えたトークセッション