市民公開講座等 (14)

環境医学研究所 市民公開講座 「遺伝子研究最前線ー希少・難治性疾患との戦いー」

場所 E31 野依記念学術交流館2階カンファレンスホール
時間13:00~15:45

最新の遺伝子研究を軸に、希少・難治性疾患克服に向けた取り組みについて、診断/治療/予防など様々な角度からお話し頂きます。

  

 

講師

片峰 茂氏(長崎大学前学長)

浦野 健氏(島根大学教授)
中田 慎一郎氏 (大阪大学教授)
荻 朋男氏 (名古屋大学教授)

  

◆「プリオン研究における分子生物学のインパクト」

片峰 茂 (かたみね しげる) 長崎大学前学長

 

ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病や動物の狂牛病など異常型プリオンタンパク質 (PrP)の蓄積が原因で発症する一連の脳変性疾患をプリオン病と総称する。異常構造のタンパク質の蓄積が原因となる点では、タウ蛋白によるアルツハイマー病やαシヌクレイン蓄積が原因のパーキンソン病と同じ発症メカニズムであるが、プリオン病が他と区別されるのは、感染症としての性格を明確に有することである。プリオン病は、食や接触を介して他の個体に伝播し、その感染性は病変脳組織を実験動物の脳内に接種することで再現できる。問題は、感染する病原体の本体である。ウイルスや細菌など既知の病原体とは全く異なる性状を有するため本体は長年不明で"非通常病原体"と称されたが、1982年米国のS.プリシナーは「病原体は脳組織に蓄積するタンパク質 (PrP)そのものである」とする衝撃的な"タンパク質単独仮説"を発表し、その病原体をプリオンと命名した。「増殖の本態は核酸の増殖である」とするそれまでのセントラルドグマに反するこの仮説は、当初学界から相手にされることはなかったが、その後正当性を支持する研究成果が蓄積し、遂に1998年プルシナーにノーベル医学生理学賞が授与されるに至った。講演では、この過程で決定的役割を果たした遺伝子レベルでのアプローチについて紹介するとともに、最近のプリオン研究の進展についても言及する。

  

  

◆「膵がん撲滅プロジェクト」

浦野 健 (うらの たけし) 島根大学医学部医学科生化学講座 (病態生化学分野) 教授

膵がんプロジェクトセンターセンター長

 

膵がんって、聞いたことありますか?

患者さんの経過が極めて悪いので有名ながんです。島根県の膵がん患者さんの数は全国平均よりやや多いです。そこで島根大学戦略的研究推進センターの一つである、我々が率いる膵がんプロジェクトセンターでは、膵がんに対する低侵襲的な新規治療法や早期診断法の開発を進めています。プロジェクトセンターの現状や地域の高校生と一緒に行っている研究についてわかりやすくご紹介します。

  

  

◆「正確に遺伝子修正する方法の開発をめざして」

中田 慎一郎 (なかだ しんいちろう) 大阪大学高等共創研究院 教授

  

変異した遺伝子配列を書き換えて遺伝性疾患を治療する。かつては「夢の治療法」でした。2012年にCRISPR/Casシステムが発見され、ゲノム編集技術は急激に発展・普及し、ゲノム編集による遺伝子治療がいよいよ現実的になってきました。

現在普及しているゲノム編集では、DNA2本鎖を1度切断し、この切断を修復するときに配列を書き換える、という手法が取られています。残念ながら、設計通りにゲノムが書き換えられるよりも切断部位に変異が発生する頻度の方が高く、臨床応用を考えると、まだ十分に安全な技術とは言えません。

「どうにかしてもっと安全な遺伝子修正方法を開発できないか。」世界中で多くの研究者がこの難題に取り組んでいます。本講座では、講演者の研究室で開発した、安全な遺伝子治療に向けた技術改良についてお話しします。

  

  

◆「希少難治性疾患の病因究明と病態解析」

荻 朋男 (おぎ ともお) 名古屋大学環境医学研究所 教授

  

現在の医療技術でも治療が困難な病気は数多く存在します。これらの治療法を開発するためには、まずその病気をよく理解する必要があります。私たちは、様々な病気に共通する特徴をとらえ、原因を探ることで、病気が発症する仕組みを理解したいと考えています。

たとえば「がん」は、遺伝情報にエラーが蓄積し、細胞が異常に増殖することで発症します。遺伝情報のエラーは年をとるごとに増えてゆくので、がんの発症は若年では少なく、高齢者で多くなります。ところが、非常にまれに若年でがんを発症する遺伝性の病気がいくつか知られています。これらの病気に共通する特徴を調べることで、がんの発症に関係する遺伝子やその機能を知ることができます。

私たちが研究している希少疾患の患者数は人口数十万人に1名と極めて少ないですが、このような希少な病気を理解することは、がんのような一般的な病気の治療法開発にもつながります。

  

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