名古屋大学豊田講堂改修竣工式・同竣工記念ホームカミングデイ

 豊田講堂改修竣工式・同竣工記念ホームカミングデイが、2月2日(土)、昨年12月に改修工事を終えた豊田講堂において開催されました。当日は、厳しい寒さにもかかわらず、同窓生、学生のご家族、一般の方等、約2,500名もの参加がありました。
 豊田講堂は昭和35年の竣工以来、約半世紀にわたり本学のシンボルとして、入学式・卒業式、学会、シンポジウムなど、教育・研究の場として利用されてきました。しかし、老朽化が著しいため、トヨタ自動車株式会社及びトヨタグループ各社のご寄附により、一昨年12月からほぼ1年をかけて改修・増築工事を行い、工事の完了を記念して、この度改修竣工式を執り行ったものです。また、本学の研究活動等を同窓生、学生のご家族、地域住民の方にご覧いただくため毎年秋に開催している「名古屋大学ホームカミングデイ」を、今年度は同竣工式と併せて開催することにより、関係者だけでなく、より多くの方々に新たな豊田講堂をご覧いただける企画としました。

■豊田講堂改修竣工記念式典
 午前10時30分、トヨタ・パートナーロボットによるファンファーレ演奏で、華々しく式典の幕が切って落とされました。
 平野総長の開会あいさつでは、関係者への謝意、改修完了の喜び、豊田講堂を教育・研究の発信拠点として更に活用していく旨の決意が述べられました。次に豊田章一郎全学同窓会会長(トヨタ自動車株式会社取締役名誉会長)から講堂の多様な利用に対する期待及び教育研究機関として名古屋大学の益々の発展への期待を込めた祝辞が、また、豊田講堂の設計者であり、今回の改修にあたっても設計を担当いただいた槇 文彦株式会社槇総合計画事務所代表取締役から講堂建設当時の想い出を交えての祝辞が、そして松原武久名古屋市長から改修完了を祝う祝辞がありました。
 引き続き、杉浦理事から、今回の改修・増築の概要として、外観の復元、耐震補強、ホワイエ(アトリウム)の増設、ギャラリーの整備、客席の機能改善、舞台の機能改善について説明がありました。
 最後に、今回の改修にあたりご尽力いただいたトヨタ自動車株式会社及びトヨタグループ各社、株式会社槇総合計画事務所、株式会社竹中工務店、陶壁「和多津海(わだつみ)」を寄贈いただいた名古屋市に対して、それぞれ総長から感謝状が贈呈されました。

■からくり人形実演
 竣工式と同時開催されたホームカミングデイの今回のテーマは、「ものづくり源流・からくりからロボットまで」としました。からくり人形は、江戸中期以降、庶民に親しまれたいわゆる木製ロボットで、日本人のロボット観を育むと同時に科学技術への興味の喚起という点でも重要な役割を果たし、ものづくりの精神は現代まで脈々と受け継がれています。
 記念式典終了後、テーマの一翼を担う「からくり人形」の実演が、尾陽木偶師(びようでぐし)九代玉屋庄兵衛氏により披露されました。実演の司会進行は、予てより玉屋氏と親交があり、機械制御工学を専門とする末松良一本学名誉教授が務めました。おふたりは、NPO 法人からくりロボットのメンバーとして、アメリカでのからくり人形実演でもジョイントの経験があります。出し物は、「からす天狗」、「茶運人形」、「弓曳童子」の3題で、茶運人形の実演では、人形の服をはがし内部の詳しい仕組みの説明もありました。

■トヨタ・パートナーロボットによるパフォーマンス
 からくり人形の実演に引き続き、トヨター・パートナーロボットによる楽器演奏が行われました。パートナーロボットは、トヨタ自動車が「人の役に立つ」パートナーとして開発したロボットで、これからの社会における「家庭内での家事支援」、「介護・医療支援」などの領域で、人をサポートしていくことが期待されます。人工唇を持ち、滑らかな指の動きを実現した4台のロボットが、トランペット、チューバ、ドラムをそれぞれ器用に演奏し、参加者にも馴染みのある曲が、約30分の間に6曲奏でられました。

■除幕式
 午後12時40分から、講堂入口に設置された3枚の銘板の除幕式が行われました。銘板にはそれぞれ、昭和35年の日付でトヨタ自動車工業株式会社(当時)からのご寄附により豊田講堂が建設されたこと、平成13年の日付で豊田合成株式会社からのご寄附により赤﨑勇本学特別教授が開発した青色発光ダイオードを用いた時計台が完成したこと、平成20年の日付でトヨタグループ10社からのご寄附により講堂の改修・増築が実現したことが記されています。
 引き続き、今回の増築工事により豊田講堂と一体化したシンポジオンのエントランスホールに設置された陶壁「和多津海」の除幕式が行われました。和多津海は、加藤唐九郎氏が昭和45年に大海原の白波をイメージして製作した高さ2.8メートル、長さ6.5メートルの大作で、名古屋市職員研修所「修善寺荘」に寄贈され永らく飾られていました。この度、豊田講堂改修を記念して、名古屋市職員互助会から本学に寄贈されたものです。

■竣工記念パーティー
 午後1時から、シンポジオンホールにおいて、関係者約300名が参加して、竣工記念パーティーが開かれました。総長からのあいさつ、齋藤英彦全学同窓会副会長からの来賓あいさつに続き、鏡割りが行われました。丹羽宇一郎全学同窓会副会長から乾杯の発声があり、参加者一同で豊田講堂改修竣工を祝いました。

■トークセッション「日本の教育を考える」
 午後2時40分から、パネリストに丹羽宇一郎伊藤忠商事株式会社取締役会長、郷 通子お茶の水女子大学長、辻村哲夫国立美術館理事長、コーディネーターに小出宣昭中日新聞社常務取締役をお迎えして、トークセッション「日本の教育を考える」が開催されました。前半は、日本の初等中等教育の現状と課題を中心に、家庭や大人の振る舞いが子どもに与える影響、学習指導要領の改定が「ゆとり教育」という造語としてひとり歩きしたことにより発生した誤解と学習指導要領の真の目的、少子化という環境が招く弊害等について討論を行い、後半は、高等教育のあり方について、大学での英語による授業の導入、学生を主体としてのカリキュラム編成、理系文系という垣根にとらわれない教育等、各パネリストから独自の視点で指摘がありました。最後に各パネリストから、本学に対して、日本の中で安住することなく、国際的競争力をつけて世界的に通用する大学になって欲しいとの期待が寄せられました。コーディネーターの軽妙な進行と、パネリストの真剣かつウィットに富んだ発言に満員の聴衆は惹きつけられ、予定時間を10分以上超過して、トークセッションは終了しました。

■展示コーナー
 豊田講堂2階では、豊田講堂の歴史展及び朝日新聞社との共催で地球温暖化により変貌するヒマラヤの氷河に関する写真展等が開催されました。

■貴重書の展示 〜学報の表紙を飾った貴重書〜
 豊田講堂3階では、本学が保存する貴重書の展示が終日行われました。トマス・ホッブズ著「リヴァイアサン」(初版)、ユークリッド全集(グレゴリー版)(初版)など、平成16年度まで本学の学内機関誌として親しまれた「学報」の表紙をシリーズとして飾った貴重書等が展示されました。

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