名古屋大学高等研究院の別所-上原 学(べっしょ-うえはら まなぶ)特任助教らの研究グループは、米国モントレー湾水族館研究所(MBARI)との共同研究で、深海4,000 mまでの海底を調査し、新たに4種の発光するサンゴやイソギンチャクの仲間を発見しました。さらに、これらの発光の分子メカニズムを解析し、八放サンゴ亜綱における発光能力の進化の一端を明らかにしました。
サンゴやイソギンチャク類(花虫綱)は7,500種ほど報告されており、海洋生態系に重要な生物です。近年では、水族館や個人でもサンゴの飼育展示が可能になり、その多様な色彩で私たちを楽しませてくれます。実は、サンゴの仲間には暗闇で発光する能力を持つ種が報告されています。しかし、その報告例は40種ほどと少なく、また、発光種がそれぞれ離れた系統で見つかることから、花虫綱における発光の進化の歴史は謎に包まれていました。また、深海における発光サンゴに関する研究もほとんど報告はありませんでした。
研究グループは、西太平洋のモントレー湾の深海を調査し、新たに発光するサンゴ・イソギンチャクを4種発見しました。さらに、八放サンゴ亜綱のサンゴ類は共通の酵素タンパク質を用いて発光することが明らかになりました。このことは、八放サンゴ亜綱の共通祖先で発光が一度だけ進化したことを示唆しています。本研究により、発光する花虫類はこれまで考えられていたよりもはるかに多い可能性が、示唆されました。今後、より注意深い観察などにより、花虫綱における発光生物が続々と見つかるかもしれません。
この研究成果は、2020年7月9日付米国科学雑誌「Marine Biology」に掲載されました。
この研究は、David and Lucile Packard foundationの支援のもとで行われたものです。
・遠隔操作深海探査機(ROV)を用いて10種のサンゴやイソギンチャク類(花虫綱動物)を調査した。その結果、ソフトコーラル類やウミエラ類、イソギンチャク類など4種が新たに発光する種として見つかった。
・高感度カメラを搭載したROVにより、7種の深海の花虫綱動物が発光する様子をその生息地で撮影することに世界で初めて成功した。
・八放サンゴ亜綱のサンゴ類は共通の分子メカニズムにより発光することを発見した。
すなわち、八放サンゴ類の発光の進化が単一起源である可能性を示唆した。
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雑誌名:Marine Biology
論文タイトル:Biochemical characterization of diverse deep-sea anthozoan bioluminescence systems
著者:Manabu Bessho-Uehara (別所-上原 学), Warren R. Francis, Steven H.D. Haddock
DOI: 10.1007/s00227-020-03706-w
高等研究院 別所-上原 学 特任助教
http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~junkei/new/index.html