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農学

2020.04.23

接木が誰でも簡単に! ~芽生えの接木を効率化する接木チップの開発~

名古屋大学生物機能開発利用研究センターの野田口 理孝准教授と筒井 大貴研究員らの研究グループは、これまで熟練した技術が必要であったモデル植物シロイヌナズナの極めて小さな芽生えの接木(マイクログラフティング)を誰でも簡単に行なうことのできる「接木チップ」を新たに開発しました。
植物は、様々な環境への応答を全身的なシグナル伝達によって調節していることが近年の植物科学の研究で明らかとなっています。それらの研究に有効な研究手法が、シロイヌナズナのマイクログラフティング法でした。しかし、種子から発芽して数日後の若い芽生え(茎の太さは、0.2~0.3 mm)を用いた接木で、技術的には大変に困難でした。今回、研究グループは、電子回路を作る際に使う微細加工技術MEMSを接木に応用し、オンチップで植物を保持して接木することのできる接木保持具となる接木チップを開発しました。既に国内外の他の研究グループとの間では本技術を活用した共同研究が進められており、植物科学分野で新たな研究成果が生まれることが期待されます。「接木チップ」は、理化学研究機器?消耗品を取り扱う株式会社バイオメディカルサイエンスより近日販売予定です。
本成果は農業分野で応用展開もされ、名古屋大学発ベンチャー グランドグリーン株式会社では、トマト栽培に使用される接木苗の生産を効率化する「接木カセット」が開発されました。接木カセットは、今春より試用販売が開始されています。
この研究成果は、令和2年4月13日付英国科学雑誌「The Plant Journal」にて公開されました。
この研究は、科学技術振興機構(JPMJER1004,15657559,15665754)、科学研究費助成事業(18KT0040, 18H04778, 18H03950)、公益財団法人キヤノン財団(R17-0070)の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

* 研究用途として、シロイヌナズナ芽生えを用いた接木法を簡便化・均一化・効率化する「接木チップ」を開発
* 環境条件(糖の外的投与、温度)による接木の効率への影響を評価
* 植物の生育に必須な微量栄養素の一つである鉄(Fe)の輸送には、地上部と地下部の間のニコチアナミンあるいはニコチアナミン/鉄複合体の移動が重要
* 応用展開として、トマト接木苗の生産を効率化する「接木カセット」が名古屋大学発ベンチャー グランドグリーン株式会社により開発された

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:The Plant Journal
論文タイトル:Micrografting device for testing systemic signaling in Arabidopsis
(シロイヌナズナにおける全身性シグナル伝達機構を研究するための接木チップ)
著者:Hiroki Tsutsui, Naoki Yanagisawa, Yaichi Kawakatsu, Shuka Ikematsu, Yu Sawai, Ryo Tabata, Hideyuki Arata, Tetsuya Higashiyama, Michitaka Notaguchi
(筒井 大貴、柳澤 直樹、川勝 弥一、池松 朱夏、澤井 優、田畑 亮、新田 英之、東山 哲也、野田口 理孝)
DOI: 10.1111/tpj.14768

URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tpj.14768

 

【研究代表者】

生物機能開発利用研究センター 野田口 理孝 准教授
http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~graft/