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工学

2021.01.12

導電性ポリマーはどのように電気を流すのか ~IoT社会を支えるフレキシブルデバイスへ前進~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の伊東 裕 准教授、田中 久暁 助教、竹延 大志 教授らの研究グループは、導電性プラスチック(ポリマー)が電気を流すメカニズムを解明し、ポリマー薄膜の電気伝導を自在にコントロールしつつ電子機能を引き出す可能性を切り拓きました。

導電性ポリマーは多彩な応用が期待されますが、乱れを含んだポリマー薄膜の電気伝導を正確に理解することは従来極めて困難でした。本研究では、分子配列の秩序が極めて高い高分子薄膜に電解質を用いて高濃度に電荷を導入することで、半導体から金属的挙動を示すまで電気伝導性を自在にコントロールすることに成功しました。また、磁場と組み合わせた詳細な実験により、金属的な伝導をもたらす電子の波が薄膜中に広がるメカニズムを初めて明らかにし、従来明らかにされてこなかった伝導特性を向上させるための薄膜の構造条件を特定することに成功しました。この成果は、電気伝導特性のみではなく、温度差から発電する熱電変換性能を制御する上で重要な知見となることもわかり、IoT社会の実現に向け高分子を用いた柔らかいエレクトロニクスの広がりが期待されます。

この研究成果は、2021年1月8日付(日本時間1月8日19時)英国科学雑誌「Communications Physics」オンライン版に掲載されました。
 

【ポイント】

・電荷濃度の精密制御により、「高結晶性」ポリマーの電気伝導を金属的状態まで制御。

・「結晶内」と「結晶間」の電気伝導メカニズムを磁場効果を用いて初めて解明。

・高性能材料の開発につながり、フレキシブルなエレクトロニクスの発展に期待。

 

 ◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Communications Physics

論文タイトル:Charge Transport and Thermoelectric Conversion in Solution-Processed Semicrystalline Polymer Films under Electrochemical Doping

著者:伊東 裕*、馬田 裕章、渡辺 且弥、田中 久暁*、竹延 大志*(*は責任著者。所属はすべて名古屋大学大学院工学研究科)

DOI:10.1038/s42005-020-00510-2      

 

【研究代表者】 

大学院工学研究科 伊東 裕 准教授

http://www.qtum.ap.pse.nagoya-u.ac.jp/