国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の森井 南美 大学院生、杉原 諒彦 大学院生、生物機能開発利用研究センターの上口(田中) 美弥子 教授らの研究グループは、理化学研究所環境資源科学研究センターの瀬尾 光範 ユニットリーダーらとの共同研究で、糖輸送体であるSWEETタンパク質のイネSWEET3aがグルコースとともに植物ホルモンの1つであるジベレリン(GA)を輸送し、イネの初期成長を促進することを初めて明らかにしました。
イネの初期生育の促進は、田んぼに直接種子を播くことで省力化をはかる「直播」という水稲生産技術において重要な課題の1つです。本研究は、直播栽培に適した育種への重要な鍵となることが期待されます。
本研究成果は、2020年10月26日、国際誌『Plant and Cell Physiology (PCP)』にオンライン掲載されました。また、PCPウェブサイトの「リサーチハイライト」で紹介されました。
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究(B)の支援のもとで行われたものです。
・糖の輸送体として報告されたSWEETファミリータンパク質の1つである、イネのSWEET3aが、グルコースとともに植物ホルモン(ジベレリン)を輸送することを発見した。
・イネSWEET3aはイネ幼苗のメソコチル(注1)師部で特異的に発現し、グルコースとジベレリンを茎頂へ輸送して、初期成長を促進することを示した。
・SWEETタンパク質のジベレリン輸送活性は、シロイヌナズナではスクロース輸送体の一部が、イネではグルコース輸送体の一部が持っていたことから、それぞれの植物種の進化の中で独立に出現していることを見出した。
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雑誌名:Plant and Cell Physiology
論文タイトル:The dual function of OsSWEET3a as a gibberellin and glucose transporter is important for young shoot development in rice
著者:Minami Morii, Akihiko Sugihara, Sayaka Takehara, Yuri Kanno, Kyosuke Kawai, Tokunori Hobo, Masako Hattori, Hisako Yoshimura, Mitsunori Seo, Miyako Ueguchi-Tanaka