TOP   >   数物系科学   >   記事詳細

数物系科学

2021.02.02

惑星は恒星と同時に作られていく? -原始星円盤の形成初期に存在する惑星形成リング-

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科理論宇宙物理学研究室の小林 浩 助教、理化学研究所(理研)開拓研究本部坂井星・惑星形成研究室の大橋 聡史 研究員、仲谷 崚平 基礎科学特別研究員、坂井 南美 主任研究員、台湾中央研究院天文及天文物理研究所のハウユー・リウ 助教らの国際共同研究グループは、成長途上にある原始星円盤[1]に「リング構造」を持つものが存在することに着目し、このリング構造は惑星形成の始まりに起こる塵の付着成長によって作られた可能性があることを示しました。  

本研究成果は、惑星は恒星の形成後に作られるという古典的惑星形成論に大きな疑問を提示するものであり、惑星は従来考えられていたよりもずっと早く、原始星とともに作られ始めるという形成メカニズムの可能性を示しています。

今回、国際共同研究グループは、円盤での塵の付着成長のシミュレーションを行った結果、リング構造が現れることを発見しました。このリング構造は、塵が大きなサイズに成長したことで形成され、そこで惑星形成が開始したことを意味しています。実際に、アルマ望遠鏡[2]やVLA[3]による電波観測でリング構造が見つかっている23個の円盤におけるリングの位置をシミュレーション結果と比較したところ、形成開始後100万年に満たない若い円盤では、リングの位置をこの形成メカニズムで説明できることが分かりました。

本研究は、2021年2月1日付科学雑誌『The Astrophysical Journal』オンライン版に掲載されました。

 

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】                                 

[1] 原始星円盤

分子ガスと塵からなる分子雲が自己重力により収縮することで星は誕生するが、その際、大きな角運動量を持ったガスが直接中心には到達できず、原始星の周りに円盤が形成される。これを原始星円盤と呼ぶ。進化が進み、原始星への降着が弱くなった状態を原始惑星系円盤と呼び、惑星系のもとになる。

[2] アルマ望遠鏡

アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA、アルマ望遠鏡)は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設。直径12mのアンテナ54台、7mアンテナ12台、計66台のアンテナ群をチリ共和国のアンデス山中にある標高5,000mの高原に設置し、一つの超高性能な電波望遠鏡として運用している。2011年から部分運用が開始され、2013年から本格運用が始まった。感度と空間分解能でこれまでの電波望遠鏡を10倍から1000倍上回る性能を持つ。

[3] VLA

カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(Karl G. Jansky Very Large Array, 略称VLA)は、アメリカ国立電波天文台が運用する電波望遠鏡である。直径12mのアンテナ27台を米国ニューメキシコ州に設置し、一つの超高性能な電波望遠鏡として運用している。

 

【論文情報】                                 

<タイトル>Ring formation by coagulation of dust aggregates in the early phase of disk evolution around a protostar

<著者名>Ohashi Satoshi, Kobayashi Hiroshi, Nakatani Riouhei, Okuzumi Satoshi, Tanaka Hidekazu, Murakawa Kohji, Zhang Yichen, Liu Hauyu Baobab, Sakai Nami

<雑誌>The Astrophysical Journal

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 小林 浩 助教

http://www.astro-th.phys.nagoya-u.ac.jp/~hkobayas/index_j.html