国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の平野 恭弘 准教授、生命農学研究科の谷川 東子 准教授らの研究グループは、兵庫県立農林水産技術総合センター(森林林業技術センター)、兵庫県立大学、京都大学、神戸市立工業高等専門学校との共同研究で、里山林に広くみられるコナラを伐採すると、根系の土壌斜面を支える力が低下することを初めて定量化しました。里山林の土壌では、樹木の根系が土壌を支え斜面の安定性を維持しています。樹木の枯死後その安定性は低下しますが、伐採されても根株から新しい芽が萌芽し再生する広葉樹では、その安定性が維持されると言われてきました。本研究ではコナラの伐採後3年間、萌芽再生しても根系の土壌斜面を支える力は低下しつづけること、特に萌芽再生しないコナラでその低下は顕著であることを明らかにしました。
本研究は、里山林伐採、特に萌芽再生しない樹木の伐採には、斜面安定性という防災機能が低下しないように土壌斜面の安定性を管理する必要があることを示しています。本研究の結果は、豪雨などによる表層土壌崩壊から防災機能を高める「災害に強い森づくり」の管理指針の作成に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2021年2月5日付で『Ecological Engineering』にてオンライン掲載されました。
本研究は、平成25年度から始まった科学研究費補助金基盤研究(A)『減災の観点から樹木根系の広がりを非破壊的に評価する方法の確立』、令和2年度から始まった科学研究費補助金基盤研究(B)『地上部植生と地中レーダを用いて広葉樹林における根の崩壊防止力を知る』の支援のもとで行われたものです。
・里山林に広くみられるコナラについて伐採後の土壌斜面安定性を評価。
・伐採後3年間コナラ根系の土壌斜面を支える力は低下し、萌芽しないコナラで低下が顕著。
・コナラ伐採後の跡地管理に土壌斜面安定性の低下を考慮すべきことを提案。
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掲載紙:Ecological Engineering
論文タイトル:Dynamics of soil reinforcement by roots in a regenerating coppice stand of Quercus serrata and effects on slope stability(コナラ林伐採後の根系強度の動態と斜面安定への影響)
著者:山瀬敬太郎(兵庫県立農林水産技術総合センター)、藤堂千景(同左)、鳥居宣之(神戸市立工業高等専門学校)、谷川東子(名古屋大学)、山本智究(同左)、池野英利(兵庫県立大学)、大橋瑞江(同左)、檀浦正子(京都大学)、平野恭弘(名古屋大学)
DOI:10.1016/j.ecoleng.2021.106169