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人文学

2021.04.06

7200年前の沖縄に多数のブタがいた

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学博物館・大学院情報学研究科の新美 倫子 准教授は、元沖縄県立埋蔵文化財センターの盛本 勲氏(当時)との共同研究では、沖縄の代表的な縄文時代の遺跡である野国貝塚(沖縄県嘉手納町)から出土した大量のイノシシ骨について、骨に見られる家畜化現象1)(イノシシとブタの形の違い)に着目した分析と、骨そのものの年代測定を行った結果、これらのイノシシとされる骨はおよそ7500〜7200年前頃のもので、その大部分はイノシシではなくブタであることをと明らかにしました。

これは、すでに農耕が行われていた中国から、野国貝塚に家畜のブタが持ち込まれたためと考えられます。この持ち込まれたブタが、わずかな数ではなく「多数」であったということは、これまであまり交流がないと考えられてきた縄文時代の中国大陸と日本列島の間の関係について、再検討する必要性を示しています。

この研究成果は、2021年3月31日に日本動物考古学会の学術雑誌『動物考古学』38号に掲載されました。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金と豊秋奨学会平成29年度研究助成金の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・7200年前(縄文時代早期)という、日本列島の人々が狩猟採集で暮らしていた古い時期に、農耕とセットになるはずの家畜のブタが、沖縄に「多数」いたことが明らかになった。

・これは、すでに農耕が行われていた中国から、野国貝塚に家畜のブタが持ち込まれたためと考えられる。

・この持ち込まれたブタが「多数」であったことは、これまであまり交流がないと考えられてきた縄文時代の中国大陸と日本列島の間の関係について、再検討する必要性を示している。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

1)家畜化現象:

「家畜化」の過程で起きるさまざまな変化であり、骨では下顎骨の前面が凹む以外にも、頭蓋骨の額と鼻の境目に段ができる、涙骨(眼窩の前にある骨)が短くなる、骨そのものが肥大する等があります。

 

【論文情報】

掲載紙:動物考古学38号

論文タイトル:野国貝塚群B地点出土イノシシ遺体の年代と形質について

著者:新美倫子(名古屋大学博物館・大学院情報学研究科)・盛本勲(沖縄県立埋蔵文化財センター)

 

【研究代表者】

名古屋大学博物館/大学院情報学研究科 新美 倫子  准教授

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