国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科理論宇宙物理学研究室の小林浩助教、理化学研究所(理研)開拓研究本部坂井星・惑星形成研究室の仲谷崚平基礎科学特別研究員らの国際共同研究グループ※は、中間質量星[1]周りにある「原始惑星系円盤[2]」のガス散逸過程をシミュレーションし、円盤の寿命が従来の認識(数百万年)よりも10倍程度長い可能性があることを示しました。
本研究成果は、惑星系の天体がガスを獲得できる期間や、惑星系が円盤ガスとの相互作用によって構造を変える期間についての従来の考えを改める必要があることを示しています。
今回、国際共同研究グループは、太陽質量の約2倍の星の周りにある原始惑星系円盤において、星から放射される紫外線・X線により円盤ガスが流出する過程(光蒸発)についてシミュレーションを行いました。その結果、円盤質量が地球質量の約300倍以下の場合は、ガスの流出率が100万年あたり地球3個分程度になることが分かりました。これは、ガス円盤を全て散逸させるために、数千万年~1億年程度の時間を要することを意味します。本研究結果は、近年の観測により明らかになってきたガスを保有する数千万歳以上の円盤の起源を解明する上で重要な手掛かりとなります。
本研究は、科学雑誌『The Astrophysical Journal』の掲載に先立ち、オンライン版(7月12日付)に掲載されました。
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[1] 中間質量星
太陽質量の約2倍から約5倍程度の質量を持つ星。特に本研究では太陽質量の2倍程度の星を対象にした。
[2] 原始惑星系円盤
若い星(前主系列星)を取り囲むガスと固体微粒子から構成される幾何学的に薄い円盤。ケプラー回転をしている。円盤構成物質を基にして惑星系が形成する。
<タイトル>
Photoevaporation of Grain-Depleted Protoplanetary Disks around Intermediate-Mass Stars: Investigating Possibility of Gas-Rich Debris Disks as Protoplanetary Remnants
<著者名>
Riouhei Nakatani, Hiroshi Kobayashi, Rolf Kuiper, Hideko Nomura, Yuri Aikawa
<雑誌>
The Astrophysical Journal
http://www.astro-th.phys.nagoya-u.ac.jp/~hkobayas/index_j.html