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農学

2021.08.30

コウモリがウイルスの自然宿主になりやすい仕組みを解明

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科のロナルド タリガン 博士後期課程学生(現・インドネシア ボゴール農科大学 講師)、勝田 哲史 博士前期課程学生、竹前 等 研究員(現・東京農工大学)、飯田 敦夫 助教、本道 栄一 教授らの研究グループは、山口大学及び国立感染症研究所との共同研究で、ウイルス感染に対する哺乳類の自然免疫応答の分子メカニズム注1)を新たに発見しました。

本研究により、ヒトへのウイルス感染を媒介する自然宿主(コウモリ)が保持している特徴的な分子機構の理解が進み、培養細胞を用いた簡便な評価法で、他の動物種が自然宿主となり得るかどうかのリスクの推定が可能となります。

この研究成果は、抗ウイルス薬の開発に加え、野生動物を介してウイルスが伝播・拡散するリスクの見積もりに貢献するとともに、予防と治療の両面から、ウイルス感染症の対策に寄与します。

本研究成果は、2021年8月25日付学術出版社シュプリンガーの専門学術誌「Virus Genes」に掲載されました。

 

【ポイント】

・一般的に、コウモリは、ヒトに危険なウイルス感染に対する臨床症状(免疫応答)が小さい。

・コウモリの自然免疫応答には、他の哺乳類と異なる特徴があるかも知れない。

・哺乳類細胞へのウイルス感染実験により、細胞毒性に関わる機構が見えてきた。

・パターン認識受容体注2)(TLR3, RIG-IおよびMDA5)やインターフェロン注3) (IFNB1およびIFNL1)が感染後の細胞変性とウイルス複製に関わることが示唆された。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

 【用語説明】

注1)分子メカニズム:

生体内の生理現象を制御する遺伝子、タンパク質およびその他の化合物の種類、量、活性および相互作用に関する情報。

注2)パターン認識受容体:

主に自然免疫において、マクロファージや樹状細胞などの自然免疫に関する細胞に存在し、病原体などの異物を認識する機能をもつ受容体。

注3)インターフェロン:

ウイルスに感染した時、生体を守るために体内で作られるタンパク質の一種で、ウイルスを排除や増殖を抑制する働きがある。

 

 【論文情報】

雑誌名:Virus Genes

論文タイトル:Distinct interferon response in bat and other mammalian cell lines infected with pteropine orthoreovirus

著者:Ronald Tarigan, Tetsufumi Katta, Hitoshi Takemae, Hiroshi Shimoda, Ken Maeda, Atsuo Iida, Eiichi Hondo. 

DOI:10.1007/s11262-021-01865-6 

URL: https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11262-021-01865-6

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 本道 栄一 教授

https://sites.google.com/view/animal-morphology