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社会科学

2021.08.30

人の声を聞きながら食べると、一人の食事でもおいしく感じる

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院情報学研究科の川合 伸幸 教授らのグループは、一人で食事をするときには、誰かが話しているのを聞きながらのほうが、話し声がないときよりも、おいしく感じることを明らかにしました。

これまで一人で食事をするより誰かと食事をするほうが、おいしく感じるということが知られていましたが、人の音声が、どれほど一人の食事のおいしさを高めるか不明でした。

本研究では、大学生を対象とした三つの実験を行いました。その結果、映像に人が映っているかどうかにかかわらず、音声が提示されているときによりおいしく感じ、摂食量も増えたことが分かり、人間の「音声」が聞こえることが、一人の食事をおいしくすることに重要であることが示されました。 

現在の日本では、多くの高齢者が一人で食事をしており、高齢者の高頻度の孤食注1)は、鬱との関連が指摘されています。この研究は、モニターに人間が映っているかにかかわらず、ラジオのように人の話し声が聞こえると一人の食事がおいしくなることも示しています。病院等で孤食している人の食事の質を高める可能性があります。

今後は、オンラインの会食などでも、同じような効果が確認されるかを確かめる予定です。

本研究成果は、2021年8月26日付科学誌「Appetite」に掲載されました。

 

【ポイント】

・一人より他人と食べるほうがおいしく感じるが、人の話し声を聞くだけでおいしく感じる。

・一人の食事では、テレビを見ないより、見ながらのほうが多く食べることが知られていた。

・テレビを見ることによる食の促進は、他者を見ることでなく、声を聞くことによることが判明。

・オンラインの会食でも、相手が見えなくても、声が聞こえるだけでおいしく感じる可能性がある。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

 

【用語説明】

注1)孤食

1人で食べること。現代の食生活を代表する「こ食」の1つ(孤食以外に小食、個食、固食など)。子どもの家庭内での孤食、独居高齢者の孤食、ランチメイト症候群に代表される青年期の孤食など世代にかかわらず孤食の機会は増加している。食事の栄養バランスの悪化や鬱の頻度との関係が指摘され、心身の健康への悪影響が問題視される。

  

【論文情報】

論文タイトル:A human voice, but not human visual image makes people perceive food to taste better and to eat more: “social” facilitation of eating in a digital media

(人が見えることでなく、人の声によっておいしいと感じ、食べる量も増える:デジタルメディアにおける食の「社会的」促進)

著者:Kawai, N., Guo, Z., Nakata, R..

川合伸幸(名古屋大学/中部大学)、郭茁根(名古屋大学)、

中田龍三郎(名古屋大学)

DOI:10.1016/j.appet.2021.105644

URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195666321005511?via%3Dihub

 

【研究代表者】

http://www.cog.human.nagoya-u.ac.jp/~kawai/