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医歯薬学

2021.09.21

がん治療における標的タンパク質予測AIの開発に成功! ~ポストゲノム時代の大規模がんプロテオミクスへ向けて~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学糖鎖生命コア研究所統合生命医科学糖鎖研究センター・名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻の松井 佑介 准教授の研究グループは、愛知がんセンターの阿部 雄一 主任研究員、東京医科歯科大学の宮野 悟 教授との共同研究で、がん発症の原因と考えれるタンパク質複合体を、超高速かつ網羅的に解析することが可能な、データ解析手法を新たに開発することに成功しました。
本研究により、これまで研究されてきたがんゲノムの異常が、その実体であるタンパク質レベルにおいて、がんの発生や転移、薬剤耐性とどのように関係しているのかを網羅的に明らかにし、新たな薬剤標的の発見へと繋げていくことが期待できます。
本研究成果は、2021年9月17日付国際雑誌「Bioinformatics」に掲載されました。

 

【ポイント】

・タンパク質複合体注1)の制御異常を予測するデータ解析手法を開発した。
・本手法は、質量分析特有の測定時に生じる欠損値やノイズに対して頑健である。
・計算の高速化も実現し、計算時間は従来と比べて最大5000倍向上した。
・110人の腎癌検体プロテオームデータ注2)へ応用し、既知のゲノム変異や薬剤的標的を含む新たなタンパク質複合体異常を200以上同定した。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)タンパク質複合体:
複数のタンパク質が集まったグループのこと。個々のタンパク質はタンパク質複合体を形成することで、細胞内における多くの生物学的プロセスに関与している。

 

注 2)プロテオームデータ:
細胞内で働いているタンパク質全てに関する情報のこと。Protein(タンパク質)+ ome(全ての)に由来する造語

 

【論文情報】

雑誌名:Bioinformatics
論文タイトル:RoDiCE: Robust differential protein co-expression analysis for cancer complexome
著者:Yusuke MATSUI, Yuichi ABE, Kohei UNO, and Satoru MIYANO
DOI:10.1093/bioinformatics/btab612
URL:https://academic.oup.com/bioinformatics/advance-article/doi/10.1093/bioinformatics/btab612/6371291

 

【研究代表者】

https://www.nagoya-ihealthcare.info