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数物系科学

2021.09.28

大量のCO2を削減できるCO2地中貯留で連続的なモニタリングが可能に! ~小型連続震源装置、光ファイバー型地震計を活用した新システムを開発~

「CO2地中貯留」は、天然ガスや石油などが分布している地層にCO2を貯留します。短期間で大量のCO2を削減できると言われるこの手法が、地球温暖化対策として注目を集めています。国際エネルギー機関(IEA)は、地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるためにCO2回収・貯留(CCS)で約15%のCO2を削減する必要があるとしています。つまり、CCSはCO2を削減する上で現実的なアプローチと考えられているのです。ただし、IEAのシナリオを実現するためには、世界中の約6000箇所で大規模なCO2貯留を行う必要があります。日本周辺の海域にもCO2貯留サイトが分布するようになるかもしれません。その際、広域に分布する複数のCO2貯留サイトをモニタリングしてCO2の漏洩や地震を防止し、安全を担保する必要があります。
これまで一般的に用いられているモニタリング手法「時間差地震探査」では、1回のモニタリング調査に1億円単位のコストがかかります。そのため、モニタリングを繰り返し実施し、貯留CO2の挙動を連続的に捉えることは困難で、急なCO2の漏洩などに対応できないおそれがありました。
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の山岡 耕春 教授、九州大学大学院工学研究院/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の辻 健 教授、東京大学地震研究所附属観測開発基盤センターの篠原 雅尚 教授らの研究グループは、新たに開発した小型連続震源装置と、光ファイバー自体を地震計として利用する技術(DAS)を用いて、これまでにない高い精度(0.01%以下の変化を検出)で、連続的にCO2貯留層をモニタリングするシステムを構築しました。また、小型連続震源装置からのモニタリング信号が、約80km離れた観測点(地震計)にも到達することを実証しました。さらに、長大な海底光ファイバーケーブル自体を地震計として扱い、小型連続震源装置からの信号の検出にも成功しました。このシステムで広域に分布する複数のCO2貯留サイトを連続的にモニタリングできるようになるため、急なCO2の漏洩にも対応できると考えられます。また、海底光ファイバーケーブルを地震計として活用すれば、海域に地震計を設置する必要がなくなるため、モニタリングの低コスト化も実現できます。今回開発したモニタリングシステムは、地熱開発の貯留層のモニタリングにも成功しています。
本研究成果は、2021年9月27日に国際誌「Scientific Reports」に掲載されました。

 

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【論文情報】

タイトル: Continuous monitoring system for safe managements of CO2 storage and geothermal reservoirs
掲載誌: Scientific Reports
著者名: Takeshi Tsuji, Tatsunori Ikeda, Ryosuke Matsuura, Kota Mukumoto, Hutapea Fernando, Lawrens,
Tsunehisa Kimura, Koshun Yamaoka, Masanao Shinohara
DOI: 10.1038/s41598-021-97881-5
U R L : https://www.nature.com/articles/s41598-021-97881-5

 

【研究代表者】

https://www.seis.nagoya-u.ac.jp/center/index.html