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医歯薬学

2021.09.29

若年性骨髄単球性白血病患者のリスク層別化のためのシンプルで堅牢なメチル化検査法の開発

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科小児科学の高橋 義行(たかはし よしゆき)教授、村松 秀城(むらまつひでき)講師、名古屋市立大学大学院医学研究科ウイルス学の奥野 友介(おくの ゆうすけ)教授、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院小児科の北澤 宏展(きたざわ ひろのぶ)医長、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校小児科 Elliot Stieglitz らの研究グループは、若年性骨髄単球性白血病(JMML)患者のリスク層別化のためのシンプルで堅牢なメチル化検査法の開発を行い、その成果を報告しました。
若年性骨髄単球性白血病(JMML)は、乳児期から幼児期に発症するまれな骨髄異形成/骨髄増殖性疾患です。JMML 患者は、DNA メチル化※1 の状態により、予後の異なる高メチル化(HM)、中間メチル化(IM)、低メチル化(LM)の 3 つのグループに分類されます。2021 年に我々を含む3 か国の国際共同研究により、メチル化アレイ※2 を用いた DNA メチル化の国際分類法が発表されましたが、メチル化アレイによる解析は高価であり、実際に臨床試験に利用するには困難を伴います。そこで、シンプルで堅牢なメチル化検査法を開発するために、137 名のJMML 患者を対象に、次世代シーケンサー※3 を用いたメチル化解析法であるDigital Restriction Enzyme Analysis of Methylation (DREAM)を用いて解析を行いました。
DREAM データを用いた発見コホート(n=99)の教師なしコンセンサス・クラスタリングにより、HM とLM のサブグループが特定されました(HM_DREAM, n=35; LM_DREAM; n=64)。国際分類法との比較が可能な98 例のうち、HM(n=30)とLM(n=60)の90 例は、DREAM のクラスタリング結果※4 と100%一致しました。国際分類法でIM 群に分類されていた残りの8 例については、4例がHM_DREAM 群に、4 例がLM_DREAM 群に分類されました。また、サポートベクターマシン(SVM)を用いた機械学習による分類器を構築し、検証コホート(n=38)を、5 年全生存率が有意に異なるHM 群(HM_SVM; n=18)とLM 群(LM_SVM; n=20)に分類することができました。
本研究で確立した DREAM 法によるメチル化検査法は、解析手技はシンプルでありながら堅牢な解析結果が得られるため、メチル化によるJMML 患者の重症度分類の臨床活用において広く利用されることが期待されます。
本研究は、「Blood Advances」に(2021 年9 月27 日)に掲載されました。

 

【ポイント】

〇合計137 名のJMML 患者検体を用いて、Digital Restriction Enzyme Analysis of Methylation(DREAM)法によるDNA メチル化解析を行いました。
〇DREAM 法によるDNA メチル化分類は、メチル化アレイ法によるJMML メチル化国際分類と高い整合性を示しました。
〇DREAM 法は、JMML に対する堅牢なDNA メチル化臨床検査法として利用可能であると考えられます。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

※1. DNA メチル化:DNA 中の塩基の炭素原子にメチル基修飾が付加される化学反応。エピゲノムに関わり複雑な生物の体を正確に形づくるために必須の仕組みであると考えられています。
※2. メチル化アレイ:重要なメチル化領域を網羅的にカバーしたアレイ上のDNA にサンプルDNAを相補させ、配列特異的に定量的にDNA メチル化を評価する方法。
※3. 次世代シーケンサー:DNA などの塩基配列を読み取る装置をシーケンサーといいます。「次世代シーケンサー」は従来の「第1 世代シーケンサー」と対比させて使われる用語。次世代シーケンサーでは従来のものと比べて大量の塩基配列を低コストで迅速に解析することが可能です。
※4. クラスタリング解析:ある集団を似たもの同士にグループ分けする解析方法。

 

【論文情報】

掲雑誌名:Blood Advances
論文タイトル:A simple and robust methylation test for risk stratification of patients with juvenile myelomonocytic leukemia
著者:Hironobu Kitazawa1,2*, Yusuke Okuno3,4*, Hideki Muramatsu1, Kosuke Aoki5, Norihiro Murakami1, Manabu Wakamatsu1, Kyogo Suzuki1, Kotaro Narita1, Shinsuke Kataoka1, Daisuke Ichikawa1, Motoharu Hamada1, Rieko Taniguchi1, Nozomu Kawashima1, Eri Nishikawa1, Atsushi Narita1, Nobuhiro Nishio1, Asahito Hama2, Mignon L. Loh6, Elliot Stieglitz6, Seiji Kojima1, and Yoshiyuki Takahashi1
所属:1Department of Pediatrics, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan.
2Department of Hematology and Oncology, Children’s Medical Center, Japanese Red Cross Nagoya First Hospital, Nagoya, Japan.
3Medical Genomics Center, Nagoya University Hospital, Nagoya, Japan.
4Department of Virology, Nagoya City University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan.
5Department of Neurosurgery, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan.
6Department of Pediatrics, Benioff Children’s Hospital and the Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center, University of California, San Francisco, San Francisco, CA, USA
DOI:https://doi.org/10.1182/bloodadvances.2021005080

English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Blo_Adv_210927en.pdf

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科 髙橋 義行 教授

https://www.med.nagoya-u.ac.jp/ped/