国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻の杉浦 英志 教授は、同専攻の伊藤 忠 客員研究者(愛知県三河青い鳥医療療育センター三次元動作解析室:動作解析専任研究員 兼務)、愛知県三河青い鳥医療療育センター小児科の越知 信彦 センター長補佐及び伊藤 祐史 医長、整形外科の則竹 耕治 センター長らとともに、小学校1年生児童を対象に、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言前と宣言後の「身体機能」注1)の違いを運動器健診で調査したところ、緊急事態宣言後の健診結果の方が、「バランス機能」は低く、「体脂肪率」は高い結果となり、「転倒」と「肥満」のリスクが高くなることを明らかにしました。
これまで緊急事態宣言前後における児童の「身体機能」の違いに着目した国内の研究報告は見当たりませんでした。
本研究は、緊急事態宣言による活動制限が「身体機能」にどのような影響を与えるのかに着目した研究であり、児童の低下しやすい身体機能を把握する手掛かりとなり、緊急事態宣言が解除された後の、児童の身体機能低下の予防に繋げていくための重要な情報源になります。特に「バランス機能」と「体脂肪率」の評価が重要であり、これらの機能を向上させるため、質が担保された適切な運動プログラムを提供していくことが課題です。
本研究成果は、2021年9月13日付国際学術誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」電子版に掲載されました。
・ 緊急事態宣言後の児童は、宣言前の児童よりも「バランス機能」が低く、「体脂肪率」が高かった。
・ 緊急事態宣言後の児童は、「バランス機能」の低下と「転倒回数」の増加、「体脂肪率」の上昇と関連していた。
・ 緊急事態宣言後の児童の「転倒リスク」は、宣言前の児童の1.899倍であった。
・ 緊急事態宣言後の児童は、宣言前の児童よりも「身体活動注2)時間」は長いが、運動の質が十分に担保されていない可能性が示唆された。
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注1)身体機能:身体が持つ能力のことを指す。
注2)身体活動:安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての動き。
雑誌名:International Journal of Environmental Research and Public Health
論文タイトル:Effect of the COVID-19 Emergency on Physical Function among School-Aged Children
著者:Tadashi Ito1,2*, Hideshi Sugiura2, Yuji Ito3, Koji Noritake4, and Nobuhiko Ochi3
所属:1. Three-Dimensional Motion Analysis Room, Aichi Prefectural Mikawa Aoitori Medical and Rehabilitation Center for Developmental Disabilities, Okazaki, Japan
2. Department of Integrated Health Sciences, Graduate School of Medicine, Nagoya University, Nagoya, Japan
3. Department of Pediatrics, Aichi Prefectural Mikawa Aoitori Medical and Rehabilitation Center for Developmental Disabilities, Okazaki, Japan
4. Department of Orthopedic Surgery, Aichi Prefectural Mikawa Aoitori Medical and Rehabilitation Center for Developmental Disabilities, Okazaki, Japan
*筆頭著者・責任著者
DOI:10.3390/ijerph18189620
URL:https://www.mdpi.com/1660-4601/18/18/9620/htm