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工学

2021.11.10

超伝導量子コンピュータ向けの極低温環境での量子誤り訂正手法を開発 ~大規模量子コンピュータ開発の鍵となる技術を世界で初めて実現~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(総長:松尾 清一、所在地:愛知県名古屋市千種区、以下「名古屋大学」)大学院工学研究科の田中 雅光 助教と日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)と国立大学法人東京大学(以下「東京大学」)は、超伝導量子コンピュータが駆動する極低温環境で、実用的な規模の量子コンピュータを制御するのに必要な水準の消費電力、実装規模、速度、誤り訂正の性能などを満たす量子誤り訂正の手法を世界で初めて開発しました。

 

【ポイント】

本研究グループは高速・低消費電力で動作する単一磁束量子(SFQ: Single Flux Quantum、※4)回路を用いて、極低温環境で動作可能な表面符号の復号器を設計しました。また、設計した復号器が十分高速に動作し、量子ビットにエラーが生じると即座に訂正を行うことでエラーの蓄積を防ぐオンライン復号を実行可能であることを示しました。この手法により異なる温度環境間の配線を減らし、量子コンピュータのスケーラビリティを飛躍的に向上できます。また、オンライン復号により量子ビットのエラー耐性も改善されます。こうした改善は、超伝導誤り耐性量子コンピュータ開発の進展に寄与すると期待されます。
本研究では東京大学がアルゴリズムやチップ実装の設計や量子ビットとの配線の実現性に関する検討を行い、NTTは量子誤り訂正の理論面の整理や復号器の性能の評価に、名古屋大学はチップ実装および実装時の性能評価に貢献するという形で共同研究を行いました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

※4単一磁束量子(SFQ: Single Flux Quantum)回路
超伝導素子を用いて通常のビットに基づく計算を行う論理回路の1種です。図3のように超伝導体で構成されたリングの中を通る磁束は量子化されるという性質があります。そこで、量子化された磁束の有無をビットの0/1に割り当てることで情報処理を行う、というのがSFQ回路の動作原理です。CMOS(通常のコンピュータで用いられている半導体)回路と異なり、ビットの表現に電荷の充放電現象を伴わないため、CMOS回路に比べて高速かつ低消費電力で動作します。超伝導現象を利用して動作するため、超伝導量子ビットと同様に極低温環境でのみ動作するという物理的な制約を持っています。

 

【論文情報】

※本研究成果は、The 58th Design Automation Conference (DAC’21)にて、以下の論文タイトルと著者にて米国東部時間12月7日に発表されます。
論文タイトル:“QECOOL: On-Line Quantum Error Correction with a Superconducting Decoder for Surface Code”
著者:Yosuke Ueno, Masaaki Kondo, Masamitsu Tanaka, Yasunari Suzuki, Yutaka Tabuchi

 

【研究代表者】

http://www.super.nuee.nagoya-u.ac.jp/