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農学

2021.11.10

糖度が高いトマト品種を作るゲノム編集技術を開発 ~特別な栽培技術を必要とせず、果実の大きさをそのままに、甘いトマトを収穫可能~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の白武 勝裕 准 教授らの研究グループは、神戸大学、筑波大学、理化学研究所との共同研究で、トマトにおいて、葉から果実への糖の転流を制御している「インベルターゼインヒビター」をコードする遺伝子を、ゲノム編集注1)技術により機能抑制することで、植物体の成長、果実の大きさ、糖以外の成分を変えることなく、糖度が高いトマト品種を作出する技術の開発に成功しました。
高糖度トマトは消費者に人気が高く、高糖度トマトを消費者に安く、安定的に届けることが求められていますが、高糖度トマトの栽培には高度な灌水管理技術が必要とされること、そして慣行栽培より果実の大きさと収量が著しく低下することが問題でした。
本研究では「インベルターゼインヒビター」遺伝子をゲノム編集により機能抑制することで、特別な栽培技術を必要とせず、果実の大きさをそのままに、果実糖度を上げることに成功しました。本研究で開発した技術により、安定的に、安くて甘いトマトを消費者に届けることができるようになることが期待されます。
本研究成果は、2021年11月2日付国際科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究は、2014年度から始まった内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代農林水産業創造技術」及び日本学術振興会「科学研究費補助金」の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

* 高糖度トマトは消費者に人気が高いが、果実が小さく収量が減ることが課題。
* ゲノム編集技術を使い、インベルターゼインヒビター遺伝子を機能抑制することで果実の大きさをそのままに、トマトの果実糖度を上昇させることに成功。
* 特別な栽培技術を必要とせず、果実が大きく、収量が減らない高糖度トマト生産が可能となる。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
 

【用語説明】

注1)ゲノム編集:
生物の設計図である「ゲノム」の中のターゲットとする塩基配列を特異的に変化させる技術。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Functional Disruption of Cell Wall Invertase Inhibitor by Genome Editing Increases Sugar Content of Tomato Fruit without Decrease Fruit Weight
著者:Kohei Kawaguchi1, Rie Takei-Hoshi1, Ikue Yoshikawa1, Keiji Nishida2, Makoto Kobayashi3, Miyako Kusano3,4, Yu Lu4, Tohru Ariizumi4, Hiroshi Ezura4, Shungo Otagaki1, Shogo Matsumoto1, Katsuhiro Shiratake1(所属:名古屋大学1,神戸大学2,理化学研究所3,筑波大学4
DOI:10.1038/s41598-021-00966-4
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-021-00966-4

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 白武 勝裕 准教授
https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~hort/shira/top/top.html