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国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学農学国際教育研究センターの犬飼 義明 教授、名古屋大学大学院生命農学研究科の河合 翼 博士後期課程学生(名古屋大学・西オーストラリア大学国際連携生命農学専攻 博士後期課程ジョイント・ディグリープログラム在籍)、中園 幹生 教授(西オーストラリア大学兼務)、山内 章 教授らの研究チームは、国立遺伝学研究所の佐藤 豊 教授、フィリピン稲研究所(フィリピン)のロエル・スラルタ 博士、西オーストラリア大学(オーストラリア)のカダンボ・シディック 教授らとの共同研究において、イネの側根形態を特徴づける側根原基注1)サイズが、2つの転写制御因子注2)によって制御されるメカニズムを明らかにしました。
地球規模での気候変動により、乾燥によるイネ収量の減少が問題となっており、イネの耐乾性向上は喫緊の課題です。側根の可塑的な形態変化が、イネの乾燥ストレス耐性に重要であると考えられます。
本研究では、優れた乾燥耐性をもつ作物品種の育成に向けた重要な手がかりが得られました。
本研究成果は、2021年12月28日午前5時(日本時間)付アメリカ科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会 (JSPS)科学研究費補助金、科学技術振興機構 (JST) 戦略的創造研究推進事業(さきがけ)、日本国際協力機構 (JICA)/JST 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の支援のもとで行われました。

 

【ポイント】

・イネの側根原基サイズ制御に、2つのWOX転写因子注3)が作用することを解明した。
・OsWOX10遺伝子が側根原基サイズを正に制御することを明らかにした。
・QHB/OsWOX5は抑制型の転写因子であり、OsWOX10遺伝子の発現増加を抑制することで、側根原基サイズを負に制御することが分かった。
・イネのもつ可塑的に側根形態を変化させる能力を強化して、高い乾燥ストレス耐性をもつ品種を育成するための有用な手がかりが得られた。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)側根原基:側根の元となる組織で、根端分裂組織を形成する。イネでは種子根や冠根といった主軸根内部の内鞘細胞や内皮細胞から作られる。

 

注2)転写制御因子:ゲノムDNA上の特異的な塩基配列に結合し、RNAポリメラーゼによる遺伝子の転写を促進または抑制するタンパク質。

 

注3)WOX転写因子:ホメオドメインを有する植物特有の転写制御因子のグループで、植物の形態形成や幹細胞の維持において重要なはたらきを持つ。イネでは13のWOX転写因子が報告されている。

 

 

【論文情報】

雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
論文タイトル:WUSCHEL-related homeobox family genes in rice control lateral root primordium size
著者:Tsubasa Kawai, Kyosuke Shibata, Ryosuke Akahoshi, Shunsaku Nishiuchi(本学教員), Hirokazu Takahashi(本学教員), Mikio Nakazono(本学教員), Takaaki Kojima(本学教員), Misuzu Nosaka-Takahashi, Yutaka Sato, Atsushi Toyoda, Nonawin Lucob-Agustin, Mana Kano-Nakata(本学教員), Roel R. Suralta, Jonathan M. Niones, Yinglong Chen, Kadambot H. M. Siddique, Akira Yamauchi(本学教員), Yoshiaki Inukai(本学教員)
DOI:10.1073/pnas.2101846119

URL:https://www.pnas.org/content/119/1/e2101846119

 

【研究代表者】

農学国際教育研究センター 犬飼 義明 教授
https://icrea.agr.nagoya-u.ac.jp