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工学

2022.01.21

極低温で光ピンセットを実現 ―非常に低い温度下でも微粒子を遠隔操作可能な技術―

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の亀山 達矢 准教授、鳥本 司 教授らは、大阪大学大学院基礎工学研究科の蓑輪 陽介 助教、芦田 昌明 教授らの研究グループと共同で、極低温下(1.4 K = マイナス271.75℃)での光ピンセットによる微粒子の捕捉を世界で初めて実現しました。光ピンセットとは、レーザー光を用いて微粒子を捕捉・固定する技術です。これまで微粒子の光ピンセット技術は、常温付近でしか行われておらず、異なる温度領域への適用が課題となっていました。
今回、蓑輪陽介助教らの研究グループは、複数の実験手法を統合することにより、世界で初めて、光ピンセット技術が極低温という環境に適用可能であることを証明しました。これにより、医学・生物・化学・物理で幅広く利用されてきた光ピンセット技術の低温環境への新たな展開が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Optica」に、1月21日(金)午前0時(日本時間)に公開されました。  

 

【ポイント】

* 超流動ヘリウム※1という特異かつ非常に低い温度環境中で、光ピンセット技術※2により微粒子の捕捉を実現した。
* これまで光ピンセット技術は、常温付近でしか行われてこなかったが、複数の実験技術を統合することで、世界ではじめて1.4 K(マイナス271.75℃)という非常に低い温度下で、光ピンセット技術が適用可能であることを実証した。
* 光ピンセット技術は、医学・生物・化学・物理など幅広い分野ですでに使われている。今回の研究により、この光ピンセット技術が極低温という新しいフロンティアに拓かれる。また、今回実証された光ピンセット技術を用いることで、光を用いて超流動ヘリウム中の量子化された渦(量子渦)を操作する応用研究も期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

※1 超流動ヘリウム
液体ヘリウムを2.1 K以下に冷やすことで現れる量子的な液体。粘性は非常に小さく、熱伝導性が非常に高いなどの性質を持つ。

 

※2 光ピンセット技術
レーザー光を急峻に集束することで、その集光点周りに微粒子を捕捉・固定することのできる技術。

 

【論文情報】

本研究成果は、2022年1月21日(金)午前0時(日本時間)に米国科学誌「Optica」(オンライン)に掲載されます。
タイトル:“Optical trapping of solid nanoparticles in superfluid helium”
著者名:Yosuke Minowa, Xi Geng, Keisuke Kokado, Kentaro Sato, Tatsuya Kameyama, Tsukasa Torimoto, and Masaaki Ashida
DOI:10.1364/OPTICA.447557
URL:https://www.osapublishing.org/optica/abstract.cfm?doi=10.1364/OPTICA.447557

 

http://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/physchem3/index.html