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工学

2022.05.31

ロスなく短時間でのGaN基板レーザスライス技術を発明 ~GaN基板を用いたデバイスの大幅な低コスト化に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学未来材料・システム研究所の天野 浩教授、田中 敦之 特任准教授らの研究グループは、浜松ホトニクス株式会社との共同研究で、レーザを用いてGaN注1)基板をロスなく短時間でスライスする技術を新たに発明しました。
単結晶のGaN基板は高性能なGaNデバイスには欠かせないものですが、価格が非常に高く、GaN基板を用いたデバイスの普及の妨げとなっていましたが、本研究によってGaN基板を用いたデバイスの大幅な低コスト化及びそれによる社会への普及が期待されます。
本研究成果は、2021年9月9日付及び2022年5月5日付イギリス学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
本研究の一部は、平成30年度及び令和3年度から始まった総務省「電波資源拡 大のための研究開発(JPJ000254)」及び「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)(JP215006003)」の委託のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・レーザによってカーフロス(切りしろ)なくGaN基板をスライス可能なため、高価なGaN結晶のスライス時の無駄が非常に少ない。
・ワイヤーを用いないため切断面のうねりが少なく、切断面も非常に平坦であるため、スライス後の研削研磨の量を抑えられる。
・非常に硬く脆い素材であるGaNを高速で切断可能。
・GaN基板を透過するレーザ光を用いて加工を行うため、デバイス形成済みのGaN基板の裏からスライスを行い、デバイス層のみを切り離すことも可能。また大きな振動やストレスが発生しないため切断後のデバイスも正常に動作可能。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)GaN:
窒化ガリウムのこと。GaNはパワー半導体として高い性能を持つだけでなく、LED等の発光素子の材料としても有名である。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Smart-cut-like laser slicing of GaN substrate using its own nitrogen
著者:Atsushi Tanaka, Ryuji Sugiura, Daisuke Kawaguchi, Toshiki Yui, Yotaro Wani, Tomomi Aratani, Hirotaka Watanabe, Hadi Sena, Yoshio Honda, Yasunori Igasaki, Hiroshi Amano        ※本学関係教員は下線
DOI:10.1038/s41598-021-97159-w
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-021-97159-w

 

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Laser slice thinning of GaN-on-GaN high electron mobility transistors
著者:Atsushi Tanaka, Ryuji Sugiura, Daisuke Kawaguchi, Yotaro Wani, Hirotaka Watanabe, Hadi Sena, Yuto Ando, Yoshio Honda, Yasunori Igasaki, Akio Wakejima, Yuji Ando, Hiroshi Amano        ※本学関係教員は下線
DOI:10.1038/s41598-022-10610-4

URL:https://www.nature.com/articles/s41598-022-10610-4

 

【研究代表者】

未来材料・システム研究所 田中 敦之 特任准教授
http://www.semicond.nuee.nagoya-u.ac.jp/